「安田猛はノーサイン、松岡弘にはいい音が出るミット」名捕手・大矢明彦氏が語ったヤクルト両エースの生かし方と“魔術師” 三原脩監督に教わったプロとしての生き方
「どけどけ!」と怒鳴った相手は島岡御大だった
大矢: 明治の野球部が(東京・調布市の)深大寺で近かったんで、駒澤とよく練習試合をやってたんですよ。 明治のグラウンドに行って試合をやったときに、ベンチの横に、ほうきをぶら下げたおじさんがいたんです。丸椅子に座ってた。そこに、たまたまキャッチャーフライがあがったんですよ。 大矢: そのおじさんがずっと座りっぱなしだから、「どけどけどけ!」って言ったら、「なに、この若造が!」って怒られて。そしたら、それが島岡さん。 当時、明治大学野球部監督だった島岡吉郎氏。37年に渡り野球部を指導しリーグ優勝15回、大学日本一5回。“島岡御大”と呼ばれ、鉄拳制裁も辞さない熱血指導で神宮を沸かせた名物監督だ。 大矢: 後で謝りに行きましたよ。「すいませんでした」って。 徳光: 島岡御大のところにファウルボールが飛んで行ったんですか(笑)。 大矢: そうなんですよ。でも知りませんでしたから。グラウンド整備のお父さんかなと思ってたぐらいです。 その当時だと、明治には星野(仙一)さん、高田(繁)さんがいて、そっちのほうに目が行ってましたし、島岡さんはあんまり目に入んなかった。 徳光: でも、大矢さんが「どけどけ!」って言ったとき、一番びっくりしたのは星野さんだったかもしれませんね。 大矢: かもしれないですね(笑)。 徳光: 「あいつ、何を言ってんだ」って。 大矢: (笑)。
ドラフト上位で指名されず…蒲田の街をブラブラ
徳光: 駒大の戦力として実績を残して、やっぱりプロ野球は意識されたんですか。 大矢: そうですね。プロでやってみたいっていうのはずっと思ってました。 徳光: 大矢さんを指名したのはヤクルトで、7位指名。 大矢: はい。本当はほかのチームから「3番以内にする」って…。 徳光: 約束があったんですか。 大矢: 聞いてたんですけどね、そこも全然指名しなかったですし。 その当時って、夕方くらいから指名が始まってたんです。僕は指名したっていう話がないから。夕方の6時過ぎくらいに蒲田の街をブラブラ、ブラブラしてましたもん。それこそ徘徊してましたよ(笑)。 徳光: そうですか。寂しいブラブラですね。 大矢: いやぁ、もう、「この先どうしようかな」みたいな感じですよね。 そうしたら、「ヤクルトが7位で指名だ」って言われて、「ヤクルトは話も来なかったしなぁ」なんて思ってましたよ。 徳光: 全く話はなかったんですか。 大矢: なかったです。
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