【“トランプ流”ウクライナ・ガザ解決策】「誰かが泣きを見る」パワーポリティクス、私たちは冷戦から何を学んだのか
アメリカ大統領にトランプ氏が就任することが決まった。それは世界にどのような影響をもたらすであろうか。 国内インフレ拡大と広がる排外主義への対応はアメリカ国内政策にとどまらない。そして中国との貿易摩擦や台湾問題、米欧間の鉄やアルミニウムをはじめとする貿易・関税(米国輸入関税一律10%引き上げ)摩擦、イランとの核疑惑対立などトランプ第一期政権時代の記憶は、そのまま今後のトランプ外交の懸念に投影されている。そうした中でも喫緊の外交課題はウクライナ戦争とガザをめぐる中東紛争だ。それはトランプ時代のアメリカの信頼を占う試金石でもある。 求められるのは早期停戦だ。それには米欧は八方美人であることはもはやできない。俗な言い方だが、「誰かが泣きを見る」ことになる。 その誰かとはウクライナとパレスチナ民族である。決して望ましい形ではないが、リアルポリティークだ。欧州はこうした解決を懸念して、欧州連合(EU)のウクライナ支援強化と「戦略的自立」による安全保障能力強化を主張する。
第三次世界大戦の火種とパワーポリティックスの解決
戦火が拡大することはだれも望まない。それに日本ではあまり言われないが、ウクライナ紛争が始まる前から欧州の指導者たちの最大の懸念は戦火が拡大する中で、第三次世界大戦勃発の脅威だ。 かつて第一次世界大戦開始のころ、セルビアとオーストリアの間の戦端が世界戦争に拡大するとは当初欧州指導者の誰も考えなかったことだ。戦火はくすぶり続けた挙句、世界大戦に拡大した。 第二次世界大戦の本格化を招いた独ソ戦争は西欧諸国にとって潜在敵の両雄相打つむしろ願ってもない構図だと英国のチャーチル首相は当初考えていた。こうした歴史の蹉跌は、ウクライナ戦争が長引くにつれて欧州指導者の脳裏で膨らんでいる。求められるのは早期停戦だ。 こうした時、人は指導者が代わったり、政変の勃発のような新しい国際環境の変化に期待する。その意味では価値観や信条はともかく、ウクライナとガザをめぐる紛争の新たな契機としてアメリカ新大統領の誕生に注目が集まっているのは確かだ。トランプ大統領誕生は解決のきっかけとなるのか。