五反田にITベンチャー集結 “五反田バレー”品川区の創業支援とは?
日本国内の会社は9割以上が中小企業といわれており、日本の経済・産業は中小企業が支えているといっても過言ではありません。近年、中小企業は後継者難などの理由から、黒字でも自主廃業するケースが目立っています。中小企業に活力がなくなれば、それは日本全体を蝕(むしば)むことにもつながります。それだけに、行政も中小企業の支援対策に力を入れるようになっています。 そうした中小企業支援と並び、行政が力を注力するようになっているのが新しい事業・企業の育成、つまりベンチャー支援です。ベンチャーを起こそうとする起業家はテレビや新聞で取り上げられやすく、注目を浴びます。しかし、企業経営にはたくさんの困難がつきまとい、華やかなスポットライトの裏では数多くの問題を抱えています。そのため、起業しても経営が頓挫したり、事業が軌道に乗るまでに時間がかかったりすることは珍しくありません。 都や市区町村といった行政組織では、地域活性化の観点から起業支援に取り組む潮流が強くなっています。
駅東側にソニー本社があったことも一因
東京都品川区の五反田駅界隈は、ITベンチャーが多く集まるエリアとして近年注目されています。一昔前まで歓楽街というイメージの強かった五反田駅界隈ですが、ここ10年間で大きく変貌しているのです。 「よく誤解されるのですが、品川区には品川駅があるから新幹線も停車するし、将来的にはリニアも停車するから、大企業がたくさん集まっていると思われがちです。しかし、品川駅は港区に所在していて、品川区ではありません。イメージに反して、品川区は今でも町工場が多く操業しており、個人商店が並ぶ商店街も健在です。そうした区の特性から、中小企業を活性化させるための対策には力を入れています」と話すのは、品川区地域振興部商業・ものづくり課の担当者です。 品川区の中小企業対策は、特に製造業やものづくりといった分野に力を入れていました。製造業やものづくり産業は、工場や事業所などを構え、そこで働く従業員を雇用しなければなりません。多くの雇用が生まれるので、品川区の地域活性化に大きく寄与するのです。 そうした中、品川区はここ10年間でITベンチャーの誘致・創業支援にも力を入れるようになりました。 「現在、品川区内には情報通信の関連企業が約900社あり、そのうちの半分は五反田駅や大崎駅界隈に拠点を構えています。五反田駅界隈に情報通信関連の企業が多く集まるのは、以前まで五反田駅の東側にソニー本社があったことが一因です。ソニー周辺には子会社や関連会社なども立地し、その取引先となるITベンチャーが駅周辺にオフィスを構えていたのです。そこから自然発生的な形で、五反田駅周辺にはITベンチャーが集まるようになったようです」(同)