AGC、3期連続下方修正で「過去最悪赤字」の言い分、事業の多角化を進めても業績はなお不安定
第2のパンチがアメリカの金利上昇だ。平井社長は「これほど米国の物価が急上昇して、金利もここまで上がるとは読めなかった」と話す。CDMOの主力事業の1つがバイオベンチャー向けの開発品。だが、金利上昇でバイオベンチャー側の資金調達が難しくなったことで開発の需要も停滞してしまった。 ■「次のピークは必ず来る」と強気だが… 受託開発・製造とも市場拡大を前提にAGCは設備増強を急いできた。足元では、シナリオが狂ったことで膨張する固定費を賄えるだけの売り上げを稼げない状況に陥っている。
それでも平井社長は、「リスクは読めなかったが、だからといって投資を抑えればよかったのかと言えばそうではない。今は先行投資型となって悪い面が非常に出てしまっているが、次のピークは必ず来る」と強気の姿勢を崩さない。 もっとも、下方修正が続く原因はCDMOだけではない。 稼ぎ頭に成長した化学品事業は、柱である塩ビ樹脂や苛性ソーダが好調だった2021年度には営業利益1388億円を叩き出した。だが、2023年度には648億円へ縮小。2024年度はさらに減少し、600億円となる見通しだ。
そもそも2022年度半ば、平井社長は化学品事業について2021年度以上の営業利益を稼げるとしたうえで、「これからも一定の市況変動はあるが、(利益が)以前の水準には戻らず、高水準が継続するとみている。非常に強固な収益基盤を確立してきている」とかなりの自信を示していた。 根拠としていたのが世界的なカーボンニュートラルの潮流だ。 塩ビ樹脂を量産するにあたり、AGCが温室効果ガス(GHG)排出の少ない「エチレン法」を採用するのに対し、中国企業は石炭を使いGHGを多く排出する「カーバイド法」を主とする。環境面に配慮せざるをえない中国政府による規制で中国企業は大きな増産が難しくなり、AGCが東南アジア市場の成長を享受できる、という読みだった。