AGC、3期連続下方修正で「過去最悪赤字」の言い分、事業の多角化を進めても業績はなお不安定
「2020年の春にコロナ禍に見舞われて以来、予見不能なことがいっぱい起こっている。ロシアのウクライナ侵攻やエネルギー高、欧米での物価の急上昇や金利高。弊社もそれぞれの年で、各事業で影響を非常に受けてきた。回復させるためにいろいろな努力をしている」 【グラフ】AGCは3期連続で業績予想の下方修正が続いている 〝素材の会社〟AGCは9月12日、東京都内でメディア懇談会を開いた。その冒頭挨拶で、平井良典社長はそう述べた。言葉通り、各事業が大きな影響を受けた結果、業績は苦戦している。
8月1日には2024年度(2024年12月期)の業績予想を大きく引き下げ、最終損益が従来予想の530億円の黒字から過去最悪の950億の赤字になりそうだと発表した。下方修正は3期連続になる。逆風下とはいえ、外部環境に「想定外」はつきもの。これだけ下振れが続くのはなぜなのか。 ■ボラティリティの高い祖業から事業を多角化 祖業であるガラス事業は、もともとボラティリティー(変動率)が高いビジネスだ。ガラスを製造する窯の建設には1基、数百億円の費用がかかる。24時間365日、1400~1600度程度を維持しなければならず、原燃料費も含めて固定費の負担が重い。そのため、主用途の建築や自動車向けの需要が落ちれば、たちまち採算が悪化してしまう。
ただ、2018年に旭硝子から現在の社名に変更し、CMでも連呼している通り、素材の会社へと完全に変わった。ガラス事業への依存度は低くなった。ガラスの国内シェアトップの地位は揺るぎないが、現在の稼ぎ頭は塩ビ樹脂や苛性ソーダ、高機能フッ素製品を柱とする化学品。さらに半導体関連などの電子部材やバイオ医薬品の受託開発・製造(CDMO)にも力を入れ、事業の多角化を進めてきた。 しかし近年の下方修正を招いたのはこれら多角化事業である。今期でいえばCDMOが足を引っ張っている。
2024年度はCDMOを含むライフサイエンス事業で240億円の営業赤字を見込むうえ(従来予想は30億円の黒字)、先行きの厳しさからCDMO関連で1183億円の減損損失を計上せざるをえなくなった。これが最終赤字への転落を招いた。 「ダブルパンチがあった――」。平井社長はCDMOの業績が悪化した理由をそう振り返る。 第1のパンチがコロナ関連の需要の急減だ。「コロナの特需があって(CDMOの)需要が急激に伸びたので(需要を一層取り込もうと)投資判断した設備が立ち上がって固定費が増えた。だが、(感染流行の鎮静化で)需要は急速になくなってしまった。投資から立ち上げまで3年くらいかかる中で、コロナの需要がどれだけ続くのかは読み切れなかった」(平井社長)。