文芸評論家の富岡幸一郎氏（小川寛太撮影）

27日投開票の衆院選について、文芸評論家で関東学院大教授の富岡幸一郎氏（66）は産経新聞のインタビューに応じ、「日本の政治や日本人にとって、本当に自立した国家として、今後への大きな転換点になる」と指摘した。 【リストでみる】夕刊フジが作成した「東京全選挙区当落予測」 今回の選挙は日本の政治や日本人にとって、本当に自立した国家として、今後への大きな転換点になると思います。有権者も自民党にお灸を据えるとかいう次元ではなく、先を見越した投票行動をしてほしい。 約30年前、世界で東西冷戦の構造が終結したにもかかわらず、自民は鎖国的に冷戦体制のまま存続してきました。米国との関係は大事にしながらも、防衛も外交もすべて自前でやる方向にかじを切らず、世界は新しいステージに入っているのにまったく追いついていませんでした。この遅れが、日本の衰退を表しています。 冷戦終結を象徴するように、東西ドイツは統一しました。そのとき日本も、日米安全保障条約を抜本的に変え、憲法を変え、日本が自立した国家になって、新たな形の日米同盟、日米安保を結び直すというチャンスだったと思います。 特に神奈川県は米軍基地を抱えており、日米関係、基地問題は人ごとではありません。自衛隊をきちっと憲法で定義し、日米関係をもう一度、組み直すことにつながれば、基地問題にも変化が生まれるかもしれません。 私たちの世代は、「なんだかんだいっても自民だよね」という意識があります。学生を見ていても、今の10代や20代前半の子は違います。自民はダメだという意識を持っています。表面的には、派閥パーティー収入不記載事件とかが問題になっていますが、安倍晋三元首相が亡くなってから、自民は崩壊してきていると思います。 今後、幾度か選挙を重ねていくうちに、自民自体が分裂することも十分あり得ます。ただ、いいことだと思います。約30年前にやるべきことをやってこなかったのが問題なのですから。 ■とみおか・こういちろう　東京都杉並区出身。文芸評論家、関東学院大国際文化学部教授。専門は近代文学。中央大文学部卒。第22回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。近著に「石原慎太郎の時の時」（ビジネス社）など。趣味は山登り。