<米国バイオエタノール最新事情>着実にガソリンからの転換進む最大の理由、日本は周回遅れを取り戻せるか
日本へ輸出する余力はあるのか
エタノールのメリットは分かったが、米国では今後もエタノール需要が増えることを考えると、はたして日本をはじめ海外へ輸出する余力があるのかが心配になってくる。 米国では現在、約6000万kℓのエタノールを生産し、そのうち約540万kℓ(23年)をカナダや英国、インドなどへ輸出している。日本で仮に「E10」が普及すれば、ガソリン消費量の1割にあたるおよそ400万kℓのエタノールが必要になる。いま米国のエタノール業界はSAF(持続可能な航空燃料)にもエタノールを利用する戦略をとっているだけに、今後、貿易の上でエタノールの需給がひっ迫するおそれが懸念される。
エタノール生産事業者で組織するもうひとつの業界団体である「グロース・エネルギー」(Growth Energy・本部ワシントン)のクリス・ブライリー副会長に「日本へ輸出する余力はあるのか」と尋ねてみた。すると次のような返答が来た。 「全米にある200カ所のエタノール工場はまだ生産能力を最大限、稼働させているわけではない。現状の工場だけでも約24億ガロン(約900万kℓ)の供給余力はある。トウモロコシの単位面積あたりの生産性は今後もさらに上がっていくから大丈夫だろう」
日本のエタノール自給率はゼロ%
資源エネルギー庁が11月11日に示した「自動車用燃料(ガソリン)へのバイオエタノールの導入拡大について」と題した資料によると、エタノールの自給率は日本がゼロ%なのに対し、米国110%、カナダ44%、フランス70%、英国38%、インド101%、ブラジル124%、中国96%などとある。 日本は「E10」の導入に向けて、当面は米国やブラジルからエタノールを輸入することになるだろうが、世界的な需要増加を考えると、いずれは国産のコメからエタノールを生産する道筋も考えておく必要がありそうだ。
小島正美