<米国バイオエタノール最新事情>着実にガソリンからの転換進む最大の理由、日本は周回遅れを取り戻せるか
エタノールを車の燃料として使えば、二酸化炭素(CO2)が発生するが、その二酸化炭素は植物が大気中から吸収したものなので、差し引きゼロ、つまり、カーボンニュートラルなのだ。もちろん、トウモロコシやサトウキビの栽培やエタノールの製造過程で化石燃料(農薬や肥料、工場重油や天然ガスなど)を使うため、完全にゼロではないが、ガソリンに比べるとCO2の発生量は約半分で済む。 日本ではCO2の発生量の約2割は運輸部門が占め、その約半分は自家用自動車から排出される。このため、仮に日本中の自動車がエタノール混合ガソリンで走れば、日本政府が掲げる「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」という目標に大きく貢献できるというわけである。
混合割合を選べるスタンド
では、世界のエタノール生産量の約半分に相当する年間約6000万キロリットル(kℓ、23年)を生産する米国では、いまどうなっているのだろうか。 12月2日、イリノイ州の最大都市シカゴ近くにあるガソリンスタンドを訪れた。ここは、全米でスタンドを展開する「パワーエネルギー社」の先進的な取り組みで知られるスタンドだ。 給油装置に近づくと「E10」のほか、「E30」「E50」「E70」「E85」の数字が見える。客がエタノールの混合割合を自由に選べるようになっているのだ。 ちょうど男性が「ここは選べるからいいよ」と「E85」を給油していた。この混合割合は、スタンドに併設されたコンビニエンス店の中に設置された自動ポンプ装置で調整している。これと同じタイプのスタンドは他に5カ所あるという。 約20年前から、このタイプのスタンドを展開してきた同社創業者のサム・オデー氏は「いまもエタノールの価値を消費者に理解してもらう努力を続けているが、ここに来てようやく認知度が上がり、成熟した市場になってきた」と話し、今後さらにエタノールの混合割合が選択できるスタンドを増やしていく戦略だ。