石原良純「自分の身は自分で守らなければ」豪雨や台風、川の増水に備えて私たちがすべきこと#災害に備える
それ以来、避難を促すときの情報伝達のあり方が変わってきました。以前は「避難準備」「避難勧告」「避難指示」という分類がありましたが、どれが一番危険なのかよくわからなかった。それを再整理して色分けし、視覚に訴えて「とにかく逃げてください」と伝えるようになったんです。例えば、テレビの画面などで黒色が表示されていたら警戒レベル5の「緊急安全確保」。これは、もう安全に逃げられる保証はないから、とにかく身の安全を確保してくださいということです。河川のそばで浸水被害や土砂災害が起きそうなところもリスクごとに色分けして、一目でわかるハザードマップも整備されています。このように、天気に関する情報の伝え方も日々進化しているのです。
「自分の身は自分で守らなければいけない」情報を受け取る方も敏感になるべき
――天気予報や避難を促す情報を、私たちはどう活用すればよいのでしょうか。 石原良純: 天気予報とそれを伝達する技術はどんどんアップデートされていますが、受け取る方も敏感にならなきゃダメです。気象庁が6月から「線状降水帯」の予測情報を出すようになりました。線状降水帯が発生すると非常に強い雨が同じ場所で降り続けることになります。まだまだ予測の精度が悪いので、線状降水帯予測情報が出ても実際に観測される確率はまだ1~2割かもしれません。でも、もし本当に観測された場合、その地域では災害につながるような大雨が降る可能性があるという目安にしてほしいです。 ――万が一避難しなければならない場合のために、私たちはどうやって備えておくべきでしょうか。 石原良純: 高齢者の一人暮らしなのか、小さい子どもがいる家庭なのか、運転できる人がいるのかいないのかなど、避難の仕方はその人自身の特性や家族構成によって変わってきます。例えば、家のそばに崖がある場合でも、崖からの距離が1軒目と2軒目、3軒目では、危険度が違う。木造の一軒家なのか、コンクリートマンションなのかによっても違う。同じマンションでも、1階と3階では状況が全然違います。 自分や家庭に合った避難をするためには、まず自分の住んでいる状況がどうなのかを知ることが重要です。自分の住んでいる町のハザードマップを確認して、どれだけ浸水の恐れがあるか、崖崩れの恐れがあるかをチェックする。そして、自分の家や家族構成はどうなんだろうと考えて、どの時点でどこへ避難するのかを考え、準備しておくとよいでしょう。 いくら危険性を伝えても“ピンとこない”という人がいますが、それだと死んじゃう可能性があるんですよ。「こういう天気予報だから」とか「行政がこう言ってるから」とかではなくて、最後は「自分の身は自分で守る」という考え方でいないと、被災につながってしまう。“ピンと来る”ように自分が変わらないといけません。 ----- 石原良純 1962年、神奈川県生まれ。俳優・気象予報士。慶應義塾大学経済学部卒業。舞台、映画、テレビドラマのほか、バラエティ番組に多数出演。湘南の空と海を見て育ったことから気象に興味を持ち、気象予報士試験に挑戦。1997年に合格後、お天気キャスターとしても活躍。日本の四季、気象だけでなく、地球の自然環境問題の発信にも力を入れており、官公庁や地方自治体、シンポジウムなどでも多数講演する。