石原良純「自分の身は自分で守らなければ」豪雨や台風、川の増水に備えて私たちがすべきこと#災害に備える
どうしたら避難してもらえる? 変化する天気に関する情報の伝達方法
――石原さん自身は天気予報を伝える立場でもあります。天気の情報を伝えるときの課題を感じたことはありますか。 石原良純: 気象予報士は、コンピューターから打ち出されたデータを言葉に変えて、皆さんにお伝えするのが仕事です。しかし、過去には伝え方がうまくいかなかったケースもあります。 印象的だったのが「平成26年8月豪雨」です。広島で大雨が降った結果、大土石流が起こって、大勢の方が亡くなりました。しかし、このときコンピューターは事前に予報をはっきりと出していたんです。ただ、1か所で数時間のうちに数百ミリの雨が降るという、当時の気象予報士にとって衝撃的なデータだった。それだけ降れば土砂災害が起こる確率が非常に高い。「本当にこんなに雨が降るの?」「こんなことが本当に起こるんだろうか」と気象予報士も迷いがあって、悩んでしまった。 いよいよ天候が悪化して、職員が現地に入ろうとしても、もう道が川のようになっていて、大きな石がゴロゴロ流れてきていて近づけなくなっていた。そうやって何もできないうちに、未明に大土石流が発生して、多くの方が犠牲となったのです。わかっていたのに防げなかった。「あれは一体なんだったんだろうか」「どうすればよかったんだろうか」という思いは、気象にたずさわっている人間すべてが今でも持っていると思います。 ――その後、天気予報の伝え方にはどんな変化があったのでしょうか。 西日本を中心とした「平成30年7月豪雨」が起きる前に、気象庁が会見を開きました。それまで台風や大雪に関して事前に記者会見することはありましたが、大雨に関してはこのときが初めてでした。 ところが、このときに予想された大雨の規模は、あまりにも大きすぎた。そのため気象庁は「西日本、東日本に数日間にわたって命に関わるような大雨が降る」という予報を出したんです。これがあまりにも漠然とした予報だったので、みんなピンと来ず、自分の身に降りかかると思えなかった。結果的に、福岡、岡山、愛媛、岐阜など広範囲で大きな災害が発生しました。