石原良純「自分の身は自分で守らなければ」豪雨や台風、川の増水に備えて私たちがすべきこと#災害に備える
集中豪雨が増える梅雨の時期や台風の季節は、川が増水しやすい「出水期」でもある。川の水量は、流域の降雨量だけでなくダムの放流によって急激に増えることも少なくない。そこで、気象予報士の資格を持ち、ダムマニアとしても知られる石原良純さんに、ダムの役割や出水期の注意点、天気に関する情報の受け取り方について聞いた。(Yahoo!ニュース Voice)
黒部ダムを見て人間界と自然界の境界線を感じた
――石原さんがダムに興味を持ったきっかけを教えてください。 石原良純: 小学3年の時に、夏の旅行で富山県の黒部ダム(通称:黒四ダム)に行ったんですよ。叔父の石原裕次郎が主演した映画『黒部の太陽』の舞台にもなったダムです。深い黒部峡谷に(高さ)百数十メートルの大きなコンクリートのダムが、ダーンと立っています。 そもそも黒四ダムは、増大する関西地方の電力需要を満たすために造られました。しかし、黒四ダムの建設は大変な難工事で171名の方が亡くなっています。当時はまだカッパを着て、ノミを使って、手で岩盤を掘ることもあった。その苦労した工事の様子をレリーフにした慰霊碑がダムのそばに立っています。 人間の暮らしを豊かにするためには、僕らは自然に踏み込んでいかなきゃいけない。しかし、自然に挑むということは、人間にとっては非常につらい作業であり、時には簡単に人の命が失われてしまう。それでも僕らは、自然を少しずつ利用して、暮らしを豊かにしようとする。人間界と自然界の境界線、その象徴がダムなんじゃないかって思ったんです。
川のそばで遊んだり暮らしたりする私たちが気をつけるべきこと
――ダムには電力供給のほかにどのようなものがありますか。 石原良純: ダムはもともと水資源の確保を目的に造られたのですが、黒四ダムのような水力発電や、洪水による被害を最小限に抑える治水などにも大きな役割を果たしています。ダムは僕らの暮らしを支えてくれているんです。 特に梅雨末期は集中豪雨も多くなるし、夏になると台風もやってくる。そういった一度に多くの雨が降る場合は、治水に関して大きな役割を果たします。 ――夏にダムのそばや河原で遊ぶ際に気をつけるべきことはありますか? 石原良純: ニュースで「下流の皆さんは、雨が降り終わった後も気をつけてください」というコメントを耳にしたこともある人もいるかもしれません。上流域に雨が降ると、ダムの水量が増えていくんですね。そしてある時ダムが放流を始め、下流にいる人たちが知らないうちに、川の水かさがドンと増すことがある。なので、河原で遊ぶときはもちろん、下流域に住んでいても、上流でいつ雨が降ったかを考えないと思わぬ災害に見舞われる可能性があります。 上流にダムがある川の場合、ダムから離れた下流域の河原などでも注意書きの看板が立っています。「ダムの放流による増水に注意してください」「サイレンが聞こえたら、危険なのですぐ逃げてください」などと書かれた看板です。でも、僕らは自分がダムの放流に巻き込まれるはずがないと思っているから、そういう看板に注意を払っておらず、事故が起こってしまうことがあるんです。