現在は退職金が減っている!? 退職金制度の最新動向とは
退職金が減っているという現状
続いては、過去と現在の退職金額を比較してみましょう。 厚生労働省の「平成9年(1997年)賃金労働時間制度等総合調査」によると、退職金給付額は大卒平均で2871万円でした。一方で「令和5年就労条件総合調査」によると、令和4年(2022年)には1896万円となっており、急速に減少しています。 このように退職金額が減少している背景としては、バブル崩壊以降の低金利によって、退職積立金が減少していることなどが影響しています。25年前には約2900万円であった退職金は、約1900万円まで落ち込み、約1000万円も減っています。
退職金制度の流れ
近年、退職金を取り巻く環境は変わってきています。 具体的には、退職一時金や確定給付企業年金(DB)などが減少する一方、企業型確定拠出年金(DC)の普及が進んでいます。なぜならば、確定給付企業年金(DB)では将来退職する際の給付が企業の責任となる一方、企業型確定拠出年金(DC)では、企業は一定金額を拠出さえすればよく、その後の運用は従業員の責任となるからです。 ちなみに、厚生労働省「令和5年就労条件総合調査」によると、退職年金制度のある企業の採用内訳を見ると、 確定給付企業年金(DB)44.3%、企業型確定拠出年金(DC)50.3%となっています。 なお、企業が退職金制度を設けていない場合や、自営業者などの場合でも、個人型の確定拠出年金(iDeCo)によって、将来の退職給付の受け取りが可能です。iDeCoでは、自分で全ての掛け金を拠出して運用方針を決めます。企業からの拠出はありませんが、企業型DC同様に税制優遇を受けられます。 また、政府もiDeCo活用を後押ししており、拠出限度額とともに、加入できる年齢を65歳未満から70歳未満に引き上げることも検討しています。
退職所得控除の見直し案について
政府は退職所得控除の見直しによって、退職金への増税を検討しています。 現在、退職所得控除額(所得税・住民税がかからない金額)は勤続年数によって決まります。具体的には、下記のような式で計算されます。 ・勤続年数20年以下……40万円×勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円 ・勤続年数20年超……800万円+70万円×(勤続年数-20年) 現行制度下では、勤続年数が20年以下の方は1年当たり40万円の控除になりますが、勤続年数が20年を超えると、20年超の部分にかかる控除額は1年当たり70万円に優遇されています。 しかし見直し案として、20年超の部分を1年当たり40万円に縮小することが検討されています。2024年度の税制改正では見送られたものの、2025年度以降に再び議論される可能性はあります。