佐藤愛子さんの娘と孫が語る、世にも奇妙な年賀状づくり「大まじめにふざける。それがわが家の《掟》でしょうか」
◆汽車のような勢いで 桃子 私、おばあちゃんとお母さんのノリについていけないこともあったな。「幽霊の手はこうだ」「いや、こうだ」とか2人でやってたけど、違いがわからない。 響子 おばあちゃんと私の間には、独特の呼吸みたいなものがあるからね。昔、おばあちゃんがものを書いているときに、私がいきなり、「愛とは何ですか?」って聞いたことがあって。 桃子 何それ。 響子 そうしたらおばあちゃんは、「『何ですか』とは何ですか?」って。それに対して私は「『何ですかとは何ですか?』とは何ですか?」ってね。変わりもの同士が一緒になって、独特の空気というか、ハーモニーが生み出されていた。 桃子 2人が鍋の中でぐつぐつ煮込まれて、ものすごく煮詰まってる、そんな感じだったよ。私がその中に入っても、ついていけなかったし、孤独に感じることもあった。 響子 あんたは生まれたときから私たちに巻き込まれているけど、質が違うかもね。
桃子 年賀状だって、はじめはおばあちゃんだけがやる気なんだけど、最終的には、3人がいいものをつくるっていう一つの方向に向かっている。 響子 だんだんノッてくるんだよ、コンサートみたいだね。 桃子 おばあちゃんもあの年でよくやるよ。体もよく動くし。 響子 撮影前はしんどそうなんだよね。さすがに80歳を超えていたし。でも、整体の先生が言ってたけど、あの人は乗り越えるべきものがあるとエネルギーが湧いてくるみたい。汽車みたいなもんでね。最初の「ガッタン」っていう動き出しは重いんだけど、あとは「シュッシュッシュッシュ!」って、勢いがすごい。 桃子 この年賀状づくりに、おばあちゃんの本質が一番出ていたのかも。 響子 でも、なにも年賀状をつくるのに「なにくそ根性」を発揮しなくてもね。あの人らしいけど。 (撮影=大河内禎)
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