「3.11」を改めて語り合う“お互い様”の関係 震災支援者らが見る被災地
聞き、語り、書いて次世代に
NPO法人とみおか子ども未来ネットワークが行う聞き書きプロジェクト「おせっぺ とみおか」。語り部として参加する佐藤勝夫さん(62)は、震災後のふるさとにある危機感を持っています。 「震災のことばかり語っていたら、町に残る歴史が震災の話ばかりになってしまう。これから子ども、孫の世代になって本当に富岡町にみんなが帰ってくるようになって町のルーツを知ろうとしたときに、震災の歴史しかないと悲しい」 福島県富岡町は、原発事故により全域が避難指示区域に指定された町です。2017年1月1日現在、1万4999人が避難しています(県内1万750人、県外4249人)。4月1日に一部地域を除き避難指示が解除される予定です。
「おせっぺ とみおか」とは、原発災害によって変貌する富岡町の地域文化を次世代に継承する目的で、避難者である中高生ら若者が同じ避難者である年配者にインタビューし、文字を起こして文章化するという事業。今年度で3回目を迎えました。キャンドル・ジュンさんがいう“語り合い”をまさに事業として行っているのです。 3月4日、その成果発表会が都内で行われました。発表会では、語り手である高齢者と聞き手の若者によるディスカッションもありました。 「私の“ふるさと”は富岡町ですけど、戻る戻らないではなく、自分が納得できる選択をしたいです」。聞き手の市村妃蘭さん(17)は、プロジェクトに参加した理由の一つに被災者であることの苦悩があったことを明かします。 「私は11歳の時に被災して東京に避難しましたが、田舎よりも東京で学校生活を送れる嬉しさのほうが勝っていました。でも被災者という立場が理解されず、友達からこれ以上踏み込めないとい言われることもありました。どこかで被災者であることが付きまとってくるんですね。だから参加して、お話を伺えて、どうやって生きていきたいか考えさせられました」 東日本大震災では震災・津波災害・原発災害と3つの災害が襲いかかってきました。地域や年齢、立場、失ったものなどによって語る物語が異なる災害といえるでしょう。「生活を取り戻すのは容易ではないと思います。けど、語り合って、聞いて、書くことで、考えていけるようになればいいなと」。同じく聞き手として参加した平良杏太さん(20)も苦境の中で前を見据えました。