自民旧安倍派、雌伏の時 衆院選で3分の1に激減、石破首相への反感くすぶるも展望開けず
27日投開票の衆院選の結果、自民党の最大派閥だった旧安倍派の衆院での勢力が選挙前と比べ約3分の1に激減し、次世代の幹部候補も次々と落選した。派閥パーティー収入不記載事件に関与した旧安倍派議員らに対し、非公認や比例重複を認めない対応を打ち出した石破茂首相(自民総裁)を「絶対に許さない」と〝石破おろし〟を口にする同派議員もいるが、展望は見通せない。 【グラフでみる】自民党派閥の衆院勢力の変化 ■59人が20人に 「帰ってきたら暴れましょう」 旧安倍派を取り仕切っていた有力者「5人衆」の一人は衆院選の公示直前、同派若手に対し、電話でこう呼びかけた。念頭にあるのが首相への不満だ。 旧安倍派では不記載事件に関与したとして9人が非公認となった。また、不記載があった他の小選挙区候補は比例代表との重複立候補を認められなかった。こうした党本部の対応が響き、衆院選後の議員数は昨年12月1日時点の59人から20人に激減した。 不記載議員らは今年4月に離党勧告や党員資格停止、党の役職停止などの処分を受けた。非公認などの措置は「二重処分」にあたるとの反感が派内で渦巻く。旧安倍派中堅は「いざ選挙という段階で首相に背後から撃たれた」と怒りをあらわにする。 ■「今は力蓄える時期」 派内で人望が厚かった西村明宏元環境相=当選6回=や和田義明氏=当選3回=らも落選した。派の屋台骨を担ってきた中堅クラスが多く落選したため、派内はいびつな構造になった。一方で5人衆は選挙戦で粘り強さを見せ、高木毅元国対委員長を除いて4人が再選した。 このうち、今後の政局でキーマンと目されているのが萩生田光一元政調会長と西村康稔元経済産業相だ。旧安倍派の一部は、11月11日召集予定の特別国会に合わせて会合を開く予定だ。同派若手は「当面は党幹部に太いパイプを持つ萩生田、西村両氏を軸に結集していくだろう」との見方を示す。 衆院選で与党過半数割れに陥ったことで自民にとって、非公認で当選した萩生田氏らの重要性は増している。自民はすでに萩生田氏ら旧安倍派以外も含む6人に自民会派入りを打診し、了承された。追加公認に向けた第一歩との見方がある。萩生田氏は当選後、党から追加公認の打診があった場合の対応を記者団に問われ、「党のマニフェストもまだ見ていない。どういう公約で戦ったのかも、現時点で分からないので、党幹部と相談しながら方向を決めたい」と述べるにとどめた。 萩生田氏周辺は「あまりに多くの仲間を失い過ぎた。今は静かに力を蓄える時期だ」と語る。(竹之内秀介)