はやぶさ2のリュウグウ観測でJAXA会見(全文1)赤道の重力は地球の8万分の1
どうやって小惑星の重力を求めたか
ページをめくっていただきまして14ページになります。このページでは、どうやって小惑星の重力を求めたかというのを説明してあります。下のほうに探査機が、小惑星の周りを運動するときに探査機に加わる力について模式した図を載せております。探査機にはもちろん小惑星の重力がかかります。そのほかに、太陽とかほかの惑星からの重力もかかりますし、あと太陽光圧の加速度というのもかかります。そのほかに探査機が自分のエンジンを噴いてスラスターで軌道を制御しますので、そのような力も働きます。 で、小惑星の周りを探査機がどのように飛ぶのかというのを、精密に地上からの計測であったり、あとは小惑星に対して探査機がオンボードで取得する画像とか、レーザー高度計の情報を組み合わせることで小惑星の重力を推定するという作業を実施しております。先日実施した重力計測効果運用のデータを用いて、小惑星の重力を推定しておりまして、この推定した重力と形状モデルから算出した体積情報を組み合わせることで密度などの情報も計算することができます。それと並行して、この推定した重力情報を用いて、小惑星リュグウの近傍での力学環境というのも現在評価を続けております。 ページをめくっていただいて15ページにいっていただきたいと思います。こちらは重力計測降下運用のシーケンス図になっております。横軸は時間を示しておりまして、縦軸は小惑星の中心からの距離を示しています。開始は約20キロのところから誘導制御を開始しまして、約6500メートルのところまで軌道を制御しながら探査機を導いていきました。その後、軌道制御をしない自由落下の時間を設けまして、23時10分ぐらいまでずっと軌道の制御をしないままフリーで落とすという運動をしています。約1400メートルのところで今度は上昇のデルタVを実施しまして、今度は自由投げ上げ運動になるフェーズをつくりました。で、さらに翌日はホームポジションにまた復帰するための軌道制御を実施したというのが大きな流れになっています。 次のページにいっていただきまして、この図は、今度は小惑星を固定した場合にどういうふうに探査機が運動したかというのを示しております。水色の線が降下の軌道、オレンジの線が上昇の軌道になっています。約6500メートルから降下を開始しまして、このくるりと小惑星の周りを回りまして、約12時間ぐらいの自由落下運動を継続しました。で、最下点で上昇デルタVを打ちまして、上昇のフェーズに入りまして、ホームポジションに復帰していったということになります。で、この運用から求められた重力、GMと呼んでおりますが、GMの値としては約30になっております。これを質量に換算しますと約4.5億トンということが求められております。 次のページにいっていただきまして、求めた重力情報から小惑星表面の加速度の環境というのを評価しております。左の図が小惑星表面の加速度がどうなっているかというのを示したものになります。この表面の加速度情報というのは今後のタッチダウン運用などに使われる予定です。表面の加速度は0.11から0.15ミリメートル毎秒毎秒程度に分布しておりまして、極付近の加速度が大きくて赤道付近が小さいという分布になっております。で、ちなみに赤道での重力というのは地球の約8万分の1程度で、イトカワと比べますと数倍大きいということになっております。 【連載】はやぶさ2のリュウグウ観測でJAXA会見(全文2)へ続く