『光る君へ』藤原宣孝は紫式部が越前に行く前から猛アプローチしていた?結婚を決断するまでの「和歌のやりとり」
■ 「伊周を都に呼び戻すかどうか」で公卿たちの意見が分かれた陣定 ドラマでは、公卿たちがみな口々に「罪を許すべきことは明らかではあるが」と発言しているのが印象的だったが、『小右記』でも「罪は恩詔を霑(うるお)すべし」という点でみな一致している。ただし、都への召喚については意見が分かれた。 『小右記』では、右大臣の藤原顕光(あきみつ)と藤原斉信(ただのぶ)は「但し召し上ぐる事に至りては明法家に下し勘ぜらるべきなり(ただし召還については明法家に命じて調べさせるべきである)」とした。明法家(みょうほうか)とは、律令法を運用する法律専門家のことだ。 藤原公季(きんすえ)と民部卿の藤原懐忠(かねただ)は「召し上ぐる事に於いては、先例を尋ねらるべきなり(召還については、先例を調べるべきである)」 とコメントしている。 さらに、藤原実資、平惟仲(これなか)、藤原公任(きんとう)、源俊賢(としかた)は「但し召し上ぐる事に至りては、只、勅定に在り(ただし召還については、天皇の決定による)」と述べて、自分たちで判断すべきではないとした。 左大弁の源扶義(すけよし)は「又、恩詔を潤しながら猶ほ本処に在るべし(恩詔を適用しながらも、やはり元の所に留めるべきである)」という意見だった。 一方、ドラマで口火を切ったのは、本田大輔演じる源俊賢だ。続いて、金田哲演じる藤原斉信、町田啓太演じる藤原公任、ロバート秋山演じる藤原実資、上地雄輔演じる藤原道綱、米村拓彰演じる藤原公季、宮川一朗太演じる藤原顕光らが、一人一人意見を述べている。 意見の内容は『小右記』と全く同じではないが、公卿たちのスタンスがまちまちだったことが映像でうまく表現されていた。 道長はこの陣定に出るために、あえて関白にならず、内覧にとどまったという。確かに、話し合いの結果だけよりも、そのプロセスに公卿の個性が表れている。道長が多忙の中でも、陣定を重視した理由がよく分かる放送内容だった。