2025年「フィリピン株式市場」資本調達総額拡大でIPOは6件を予定
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週はフィリピン株式市場のIPO動向とフィリピンのビジネス環境についてレポートしました。 【動画】日本のシン富裕層✖︎永住権・移住
2024年、IPOは3件…2025年は6件を予定
フィリピン証券取引所(PSE)は2025年に6件の新規株式公開(IPO)を予定しています。注目されているIPO候補には、マニラ西部地区の水道事業者メイニラッド・ウォーター・サービスや、統合型リゾート「オカダ・マニラ」のオーナー企業が含まれます。メイニラッドは2027年までに上場企業となり、発行済み株式の30%以上を公開することが義務づけられています。 2024年のIPO目標(6件)は未達で、現時点で3件のIPO(OceanaGold Philippines、Citicore Renewable Energy、NexGen Energy)が完了していますが、11月にセブを拠点とする燃料販売会社、Top Line Business DevelopmentのIPOが予定されています。一方、SMプライムホールディングス(Sy一族の不動産投資信託)、プライムインフラキャピタル(Razonグループ)、電子ウォレットのGCashなどの企業はIPOを延期しました。 PSEは、2025年に資本調達総額が1,400億~1,500億ペソに達する可能性があると見込んでいます。これは、市場の状況が改善する見通しからです。フィリピン中央銀行(BSP)は2024年これまでに50ベーシスポイントの利下げを実施し、政策金利は6%となっています。市場アナリストたちは、米連邦準備制度(FRB)やBSPの金融緩和が進むなかで、来年の市場状況が改善することを予想しています。
世界銀行による比「ビジネス・投資環境」の評価
フィリピンの行政簡素化を担当する機関である反レッドテープ庁(ARTA)は、フィリピンのビジネス環境と投資魅力を向上させるため、2026年までに世界銀行の「ビジネス・レディ」(B-READY)報告書で全参加国の上位20%に入ることを目指しています。 B-READY報告書は、規制枠組み、公的サービス、業務効率の3つの柱に基づき、各国のビジネスおよび投資環境を評価します。フィリピンは最新の報告書で、規制枠組みにおいて70.68点を獲得し、50ヵ国中16位(上位40%)にランクインしましたが、公的サービスで24位、業務効率で36位と低評価でした。ARTAは2028年までにフィリピンの経済をさらに改善し、外国からの直接投資(FDI)の増加を目指すとし、これにはランキング上昇が不可欠と強調しました。 この目標達成に向け、ARTAは証券取引委員会やフィリピン保健保険公社、内国歳入庁などの代表者が参加する委員会(TWG)を編成し、10の重点分野に取り組む予定。法律や規制はすでに整備されており、必要なのは関係機関や民間セクターの協力を得た実施です。 ARTAは2024年から2026年にかけて規制枠組み、公的サービス、業務効率の改善に注力し、同時にデジタルトランスフォーメーションを2028年ターゲットで進めていきます。また、2025年6月までにビジネス環境改善のための改革ガイドブックを策定する予定です。現在、電子ワンストップショップを設置する地方自治体(LGU)も増加しており、すでに112のLGUが対応済みで、これにより新規事業登録や税収が増加したと報告されています。 フィリピンは「ビジネス参入」の分野では48点に留まり、下位20%にランクされます。これは競争やダイナミックなビジネス環境の障害となっていると指摘されています。B-READY報告書は、企業のライフサイクル全体を対象にしており、ビジネス参入、公共サービス、労働、金融サービス、国際貿易、税制、紛争解決、競争市場、企業の倒産に関する評価が含まれます。 アジア経営大学院(AIM)は、フィリピンの最終目標は競争力の順位向上だけでなく、投資増加や包括的な経済成長、中流階級の拡大による貧困率の大幅な低下であり、中流階級の成長こそが、社会的・政治的・経済的な持続可能性の基盤を築き、真の経済発展を達成するための鍵だと指摘しています。
家村 均