寛一郎主演『シサム』アイヌと日本人との関係性を描いた作品。主人公が救えなかったアイヌの人々への想いを胸にとった行動とは
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!(写真・イラスト◎筆者) 【写真】サヘル・ローズの唇が大きいのは… * * * * * * * ◆映画『シサム』の意義 私は実はアイヌ文化ファン。阿寒湖温泉を訪ねた時にアイヌコタン村を見て、アイヌの踊りと音楽を堪能したのがきっかけ。だから今回の映画『シサム』の完成を知り、早速試写を申し込む。アイヌについては可能な限り資料を見ていたが、彼らは文字をもたなかったので、彼らが日本人による弾圧の中で何を思ったのかは、よくわからなかったが、アイヌの人々を弾圧し、その生きる土地を奪ったのは私たちなのではと心を痛めてきた。 古来アイヌの人々は自由に交易をし、狩りで得た毛皮などを日本本土の人々に売るなどして生活してきたが、江戸時代に入ると徳川幕府の命をうけた松前藩がアイヌとの交易を独占。要するに商社として取引に介入し、アイヌの人々に不利な交易をし、その生活を貧く追い詰めた。其れに対してアイヌ民族が蜂起し、交戦した時代がこの映画のバックグラウンドだ。 時代がさらに下って明治になると、「文明国」への発展目指す明治政府はアイヌの人々の文化を「野蛮」と見下し、強制的に土地を奪い、日本への同化政策を計った。要するにネイティブ・アメリカンを駆逐したアメリカと同じことを、日本政府はアイヌの人々にしたのである。 そのことをはっきりと描く映画や漫画が現れてきたのは、意義深いことだと思う。私達は間違ってきた過去については謝罪し、改めていく責任があるからだ。 しかし、この映画はそういった責任云々の物語ではなく、普通にヒューマン時代ドラマとして見られるので、ぜひ劇場に足を運んでほしい。何よりもおすすめしたいのは、北海道の大自然の中で、たくましくも人間らしく生きるアイヌの生活描写だ。 私達は、電化されて便利になった生活を「文明的」と思うのかもしれないが、自然と共生して生きていくことは、更に知的で文化的なのではと思わせされる。
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