スマホ進化の裏で「増える続ける廃棄物」、持続可能な処理策は
新しく登場したテクノロジーに興味を持ってあれこれ調べるとき、その性能やどんなことができるかに注意がいきがちだ。米OpenAIがこのほどリリースした動画生成AI「Sora(ソラ)」がいい例だろう。コンピューターがプロンプトから動画を作り出す過程を見るのは爽快だ。 だが私が何度も指摘してきたように、テック分野においてはハードウェアの存在も忘れてはならない。そして論理的に考えると、この種のシステムの維持に伴う廃棄物や必要とされるエネルギーについても考慮すべきだ。 例えば、米国は現在、最新のデータセンターに必要な電力を賄うために大胆な原子力計画を新たに推進している。多くの人が次世代の発電所は旧発電所よりはるかに安全なものであることを期待しているが、これは計画を進める上で確認すべき点だろう。 この他にも大きな懸念がある。消費者側で発生するハードウェアの廃棄物だ。つまり、不要になったスマートフォンをどう処分するかという問題だ。 ■増加が見込まれる電子機器廃棄物 私たちは数十年前に小さなコンピューターであるスマホをポケットに入れて持ち歩くようになった。スマホは私たちの暮らしのほぼあらゆる面に革命をもたらした。1980年代にアナログで行われていたことの多くが、今ではスマホの小さなスクリーン上で完結している。多くの人は社会とのつながりを保つ役目を担っているiPhoneやアンドロイド端末を何があっても手放したりはしないだろう。 それだけでなく、グーグルのAIモデルのGeminiなどを使えば、人々は自分のスマホを通してAIエージェントと話すことができる。大規模言語モデル(LLM)のチャットボットシミュレーションでは、新たな効率化によってエッジコンピューティングが可能になった。 こうしたことから、デバイスそのものを構成する重金属やその他の物質に注目するのは理にかなっている。 国連訓練調査研究所(UNITAR)の調査によると、2022年に世界で発生した電子機器の廃棄物は約6200万トンで、2030年までにさらに2000万トン増える可能性があるという。これら廃棄物のかなりの部分をスマホが占めているとUNITARは指摘している。 ■持続可能性の模索 私が手がけているイマジネーション・イン・アクションのイベントに参加した一部の専門家は実行に移せる解決策を提示している。例えば、研究者のドゥーハン・ジャンはこのほど、持続可能性とこの種の廃棄物の管理方法について講演した。 ジャンによると、一般的なスマホにはリチウムや銅、亜鉛、そしてレアメタルなど30を超える化学物質や金属が含まれているという。 ジャンは埋立地やゴミ捨て場の写真を見せながら人口増加などの要因に言及し、廃棄物管理にかかるコストが近い将来、年間6400億ドル(約98兆円)に達する可能性があると指摘した。