「スポーツ推薦ゼロ」「クラファンで合宿資金調達」“陸の王者”慶應がなぜ? 31年ぶり箱根駅伝へ本気で予選会突破をめざすわけ…「今年が戦力最大値」
データ分析で各選手の目標を設定
練習によって個々の選手のレベルアップを実現していく一方で、戦力分析班が作るデータも活用している。天候、気温でどんなレースになり、どのくらいタイムに影響するのか。予選会出場校のタイムから自分たちがどのくらいの位置にいるのか等々のデータを作成している。 戦力分析班の森内拓人(4年)は、こう語る。 「予選会は、留学生の集団、エースの集団があって、その後に各大学の集団がつづきます。うちは5キロ、10キロ、15キロの通過で、どの集団でレースをしていけばいいのかをデータ化して、保科コーチが指示を出す時の参考にしてもらっています。予選会を通過する確率を少しでも上げるのが戦力分析の仕事になります」 戦力分析が選手の目標設定に欠かせないものになったのは、全日本大学駅伝予選会の出場を目指した時だった。エントリーする8名の選手の10000mの合計タイムにより、上位20校が出場できるが、慶應はタイムが届かなかった。 「タイムを集計していくと出場が厳しい状況だったので、コーチからも『あと何秒足りないのか』と毎週のようにデータを聞かれたんです。最終的に出場できなかったのですが、『あと何秒、なんとかしないといけない』という目標が明確になり、チームとしてまとまってやっていく感じになったので、すごくやりがいを感じました」
正直、予選会突破の確率は50%もないけれど
昨年の箱根の予選会は22位だったが、データと順位をシンクロさせると、「妥当な結果」と森内はいう。選手の力を数値化し、チームを俯瞰して見ることができているので、チームの本当の力を理解していると言える。それゆえに、選手たちが見ている景色とはちょっと異なるようだ。 「うちは希望的観測というか、ポジティブな見方をする人が多いけど、僕は『もうちょっと冷静に行こうよ』という話をするんです。でも、そういうと怒られちゃうんですよ(苦笑)。正直なところ突破する確率は50%もないのは、みんな分かっていると思います。その中で自分も田島もなんとか今年はという思いでいますし、それをチーム全体で共有しているので、ひとつでも上の順位にいけるようにしたいです」 データを踏まえつつ、10月19日の予選会に向けて、少しでも上積みできるように練習を継続している。
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