「スポーツ推薦ゼロ」「クラファンで合宿資金調達」“陸の王者”慶應がなぜ? 31年ぶり箱根駅伝へ本気で予選会突破をめざすわけ…「今年が戦力最大値」
寮で送る共同生活
長距離ブロックの学生は、全員が寮生活だ。 「うちの学生は高校生までは実家で生活していたのが多いので、寮に入って共同生活をまず学ぶことから始まります。自分勝手な行動を慎み、整理整頓やお風呂掃除などの役割をしっかり果たすこと。忘れたり、サボったりすると罰則として1週間風呂掃除などをしてもらっています。寮を運営し、共同生活をする上で妥協はしないことにしています」 そう語る寮長の鳥塚健太(4年)は、昨年の箱根駅伝予選会でチーム4位の走りを見せた。今年も活躍が期待されたが、2月に膝を故障し、以前から「脚が抜ける感じ」にも悩まされていたので現役を引退し、寮長と学生コーチの二役をこなしている。 「寮長の仕事は、トイレットペーパーなど備品の管理注文からお金の管理、部屋割りとかですね。部屋割は大事です。2、3人部屋ですが、例えばいまひとつ陸上に集中しきれていない選手と木村(有希・4年)のように陸上ばっかみたいな選手とを組み合わせて、陸上を学んでもらうようにするなどけっこう考えます」
寮長兼学生コーチの気遣い
雑務が多いが寮長の一番大きな仕事は、選手たちのコンディションの把握だ。普段から選手を見ているので、ちょっとした行動や言葉などの変化で「おかしいなぁ」と思う選手には声をかけて確認するようにしている。 「僕は学生コーチという立場でもあるので、選手の日常的な状態や変化などを保科(光作)コーチに伝え、予選会のメンバー選考などの参考にしてもらえるようにしています」 現在の部員は、25名。駅伝強豪校の半分から1/3の部員数で、駅伝を戦うには、かなり少ない。普段の練習は、保科コーチの元、Aチーム、Bチームと故障などから復帰過程のCチームに分かれて行われている。Aチームは4~6人、それ以外がBチームだ。練習が終わるとマネージャーが練習結果をまとめ、選手はスプレッドシートに練習の振り返りや状態を記し、それを全員で共有して見られるようにしている。 ただ、Aチームの人数が示しているように、戦力が潤沢ではない。 「うちは、昨年の予選会もそうだったのですが、中間層が薄く、予選会でいえば9人目、10人目の選手が出てこない。その層を厚くするために夏合宿が重要でした」(田島) クラウドファンディングの支援で夏合宿は1次が蔵王、2次が紋別、3次が菅平と3カ所で30日間、行うことができた。練習メニューは昨年と変わらないが、高地での設定は、例えば1000mのインターバルは昨年、Aチームは3分5秒だったが、今年は2分58秒になり、Bチームは3分5秒に上がった。紋別と菅平では田島曰く「30キロのガチガチの距離走」をこなしてきた。 「練習の消化率は良かったです。特にBチームで入学して5カ月ぐらいの選手がAチームに迫る勢いでやってくれて、それに刺激を受けたAチームの選手が頑張るみたいな流れが出来ました。また、昨年はBチームの多くが集団走から離れて単独走になった瞬間、まったく走れなくなっていたのですが、2次、3次と合宿をすることで改善できました。全体的にかなり成長した夏だったと思います」(田島)
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