「自分が何を考えているのか、実は自分でもよく分かっていない」…実は優秀な人ほど犯しやすい「思考の落とし穴」
先行きが見えない「答えのない時代」を生きる私たちにとって、「自分の頭で考える力」は必須です。でも、何をどのように考えれば良いのか、どのように勉強すれば良いのか、具体的な方法がわからない人も多いでしょう。 【写真】「自分が何を考えているのか、実は自分でも分かっていない」思考の落とし穴 気鋭の哲学者・山野弘樹氏が、自分の頭で考えて学びを深めるための方法=「独学の思考法」をわかりやすく解説します。 ※本記事は山野弘樹『独学の思考法』(講談社現代新書)から抜粋・編集したものです。
なぜ「物語化する力」が重要なのか
自らの頭で思考するために必要な5つ目のスキルは、「物語化する力」です。 「問いを立てる力」が「出発点を設定するためのスキル」であり、「分節する力」・「要約する力」・「論証する力」が「そこから実際に走り出してみるためのスキル」であるならば、「物語化する力」とは、「走ったコースの景色を魅力的な再現VTRにまとめるためのスキル」であると言えます。 人によっては、この「再現VTRにまとめる」という段階に違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。なぜなら、思考の出発点を見定め、そこから走り出すというステップに比べると、この3つ目のステップは、一見それほど強い必然性を感じさせないからです。 しかし、この第3のステップは非常に重要な役割を有しています。というのも、私たちがいくら高度なことを思考したとしても、それをしっかり人に伝えることができなければほとんど意味がないからです。 伝達に失敗するというだけではありません。人に説明できないことは、おそらく自分自身も正確には理解できていないのです。 正確に理解できていることについては、どれだけ抽象的な話題でも的確なたとえを使って説明することができますし、何よりも、相手の立場に応じて説明の仕方を巧みに切り替えることができます。これができずに説明がおぼつかなくなってしまうときには、どこかに必ず理解の足りないところが潜んでいるのです。 問題の本質は、「自分が何を考えているのか、実は自分でよく分かっていない」という状況が非常に多いということです。