女子高生が出張授業で「先生」に? 灘、駒場東邦…進学校が実践する「性とジェンダー」教育の中身
■昭和女子大生が駒場東邦の生徒にジェンダーの授業 女子大と男子校の組み合わせとしては、東京都の「駒場東邦」と昭和女子大のコラボレーションも有名だ。2020年度に、当時の中1が中3になるまでの3年間にわたる継続的なコラボ企画が始まった。大学生がテーマを設定し、授業を進行する。 中1のテーマは「ディズニープリンセスの変遷」「ファーストジェントルマン」。ディズニー映画に描かれる女性像の変遷を学んだり、自分が女性大統領の夫になったらどうするか?という思考実験を行ったりした。 中2のときには、ユニバーサル・デザインやインクルーシブ教育の現状について学んだり、炎上したCMをいっしょに見ながら誰もが無意識のバイアスをもっていることを共有したりした。 中3のときには、「歩み寄る」「男女別学」「仕事と役職」の3つのテーマについて、グループワークやディスカッションを行った。「仕事と役職」というテーマについては、「もし男子校の先生が全員女性だったら」という状況を設定し、女性に対してどのような配慮が必要か、そのような配慮を前提として、自分が経営者ならどんな制度を用意するかなどを考えた。 駒場東邦での経験をふまえ、2023年秋には「本郷」と「獨協」(ともに東京都)という2つの男子校の希望者たちからなる合同チームを大学に招き、「無意識のバイアスについて考える」というテーマでアクティブラーニング型の授業を実施した。
■桐朋学園の女子部と男子部が家庭科合同授業 東京都の「桐朋学園」には、男子部と女子部の2つの中高一貫校がある。それぞれ別の場所にあり、普段は交流がない。しかし高2の家庭科においては年に1度、ジェンダーやパートナーシップについてともに学ぶ機会を設けている。このときだけ、桐朋が共学校になるというわけだ。 女子部の生徒12人が男子部を訪れた。お迎えするのは男子部の希望者19人。男女混合班でのディスカッションでは、男子部の司会がためらいを見せる場面も。 「ねぇ、どうする? これ、爆弾だよね。爆弾はあとにしようか?」 にわかにざわつく男子部生徒たち。女子部生徒はキョトン。 「じゃあ、行っちゃおう! 生理について聞いてもいいですか?」 女子部生徒が落ち着いた様子で「それは私たちにとってはそんなに爆弾じゃないから、ぜんぜん大丈夫」と笑うと、男子部生徒たちはちょっと大げさに「ふーっ」と息をつく。 その後、結婚相手に求めるものは外見か内面か、男性は女性におごるべきかについて議論したあと、「ねぇ、そろそろポッキー食べない?」と男子部生徒。何種類かのポッキーを開けて交換し合って、なんだかとても楽しそう。話題は、職場での男女平等をどう実現するか、へ。 男子部 世間では育児は女性の役割という思い込みが強いから、その目を気にするひともいるだろうね。 男子部 自分たちがこのままの気持ちで上の世代になったとき、変えられるかも。そしたら下の世代に育休とっていいよって言ってあげられる。 男子部 僕たち(男子部・女子部を含めた桐朋生)、まわりの目とか気にしないから。 女子部 うん、うん。 終了時刻の2分前にピタッと議論を終え、「あぁ~、面白かった!」と言いながら、全体会に向かった。意識の高い生徒たちが集まっているという前提ではあるがそれにしても、未来は少し明るいのかもと思わせてくれる爽やかなセッションだった。