楽しみにしていた地元での“凱旋試合”も経験。帝京長岡MF柳田夢輝は10番にふさわしい結果を求め続ける
[6.29 プレミアリーグWEST第10節 神戸U-18 1-1 帝京長岡高 いぶきの森球技場 Cグラウンド] 【写真】「マジで美人」「可愛すぎてカード出る」現地観戦した女子アナに称賛集まる その立ち位置がスタメンであっても、ベンチスタートであっても、そのポジションがフォワードであっても、サイドハーフであっても、自分が取り組むべき役割に大差はない。チームのために走って、戦って、ゴールに関わる。それを常に全力でやり遂げるだけだ。 「帝京長岡は14番がエースナンバーですけど、10番も特別感がある番号なので、その番号を背負って結果を出せるように頑張っていきたいですし、点にこだわって、アシストとかゴールに関われるような、絶対的な存在感を出せるようにしていきたいです」。 プレミアリーグ初昇格の帝京長岡高(新潟)に戦い方の幅をもたらす、ポリバレントさを有した背番号10。MF柳田夢輝(3年=FCフレスカ神戸出身)は楽しみにしていた地元での“凱旋試合”を経て、さらなる成長を誓っている。 この日が来るのを心待ちにしていた。プレミアリーグWEST第10節。ヴィッセル神戸U-18(兵庫)と対峙するアウェイゲーム。「小学校のころからずっと神戸でサッカーしていました」という柳田にとっては、リーグ戦のスケジュールが発表された時から意識していた一戦だ。 相手には昔からよく知っている顔が並んでいる。「(山田)海斗は県トレで一緒でしたし、(吉岡)嵐はジュニアユースの練習に一緒に行ったりしていました。(今富)輝也は小学校のころから知っていますし、(高村)睦弥とか(松田)志道も昔から知っています(笑)」。次々と出てくる名前に、彼らと重ねてきた時間を推し量ることができる。 ピッチサイドには気の置けない地元の友人や、中学時代のチームメイトの保護者の顔も見つけることができた。もちろんどの試合も負けられないけれど、いつも以上に気合が入っていたことは間違いない。背中に10番が躍る黄緑色のユニフォームに袖を通し、スタメンとしてピッチに足を踏み入れる。 ハッキリとした積極性はファーストシュートに滲んだ。前半15分。DF下田蒼太朗(3年)、MF遠藤琉晟(3年)と繋いだボールを受けた柳田は、ミドルレンジから左足でのシュートにトライ。軌道はわずかに枠の右へ外れたものの、惜しいシーンを創出してみせる。 最大の見せ場が到来したのは、1点をリードしていた後半28分。遠藤のパスから右サイドを抜け出した10番はGKと1対1に。右足のアウトサイド気味に狙ったシュートは、しかし相手守護神のファインセーブに阻まれ、追加点は奪えない。 「自分は『チームを勝たせられる選手にならないといけない』と思っているので、あそこは決め切りたかったですね。もっとファーを狙ったんですけど、うまく当たらなくて、ニアの方に行ってキーパーに当たってしまいました」。 35分に交代を命じられた柳田は、終盤に追い付かれるシーンをベンチから見守っていた。「攻められる時間もあったんですけど、守備陣が身体を張って守ってくれた中で、勝ち切りたかったですね。こういうレベルの相手は最後にああいう力を出してきますし、自分にも1個チャンスはあったので、ああいうところを決め切りたいと思います」。地元に帰ってきた“凱旋試合”は、悔しさの残る90分間になったようだ。 今シーズンの帝京長岡の攻撃陣は、ここまでのプレミアで6ゴールを記録しているFW新納大吾(3年)と、7ゴールを叩き出しているFW安野匠(3年)の強力2トップが猛威を振るい、リーグ2位の得点数を誇るなど、その多彩なアタックが相手ディフェンスに脅威を与えている。 ただ、新納が欠場する試合も少なくなく、その場合はこの日のように柳田が1.5列目のようなポジショニングを取りながら、安野とコンビを組むことも。「自分はフォワードというよりは、トップ下でプレーすることが多いので、裏に出るよりも少し低い位置に落ちて、背後に安野が抜けるみたいな関係性でやっています」という連携も少しずつ熟成されてきている。 一方で新納と安野が前線に並んだ時には、サイドハーフでスタメン出場することも。その時に任されたタスクを一定以上のクオリティでこなす柳田の存在が、起用する側にとっても重要な位置を占めていることに疑いの余地はない。 好きな選手にマンチェスター・シティのケビン・デ・ブライネとレアル・マドリーのジュード・ベリンガムを挙げるあたりに、理想のプレースタイルも透けて見える。ストライカーというよりはプレーメイカー。それでも与えられた背番号に対する責任と自覚はきちんと持ち合わせている。 「10番を付けるからには点を獲らないといけないので、そこにはしっかりこだわって、チームを勝たせられるようにしたいです。そのためにはもっともっと仕事をしていかないとダメですね。点ももっと決めたいですし、守備でももっと貢献することが大事になってくると思います」。 決して派手なプレーを好むわけではない。普段はどちらかと言えば控えめなタイプだ。それでもピッチの上では、自分にできる100パーセントを出し尽くして、チームの勝利のために戦い続ける。真摯に、愚直に、サッカーと向き合う帝京長岡のナンバー10。柳田夢輝の存在感はこのチームにとって、いつだって絶対に欠かせない。 (取材・文 土屋雅史)