物理法則を超えて家父長制と戦う?ジャンル横断映画『ポライト・ソサエティ』主演俳優に聞く
主人公の内面を視覚化。物理法則をも超えて抑圧と戦うこと
──本作を手がけた監督のニダ・マンズールは、同じくロンドンで暮らすイスラム教徒の女性パンクバンドを活写したドラマ『絶叫パンクス レディパーツ!』(2021年)に続いて、不遜で反逆的でありながら失態も犯すムスリム女性たちを騒々しく陽気に描き出しています。フェミニストの自立と怒りを讃える彼女が描くムスリム女性をどのように感じますか。 プリヤ・カンサラ(以下、プリヤ):多くの役者たちが、一生の間に強くて反抗的な女性の役を演じられることを、待ち望んでいると思います。これまで女性にまつわる多くの物語は、男性のまなざしから語られてきました。ニダは女性について、女性のために、女性として語っています。彼女が描く、強く、反抗的で、勇敢で、情熱的な女性キャラクターを演じることができて、私は本当に幸運だと思っています。 ──リアは、自分の前に立ちはだかる存在を、スーパーヒーローに対する悪役のように仕立てて戦っていくかのようです。 彼女の内面がアクションとしてファンタジックに描かれているとも見えますが、このユニークな心情表現についてどう思われましたか。 プリヤ:そのように視覚化されるのは、とても楽しかったです。映画のなかの戦いのシーンでは、彼女の内なる怒りが伝わってくると思います。また、彼女が経験するクレイジーな出来事を通して、リアというキャラクターが成長していく様子も見ることができます。 撮影は本当に楽しかったし、観客も乗り物に乗せられるかのように、現実逃避的というか、超現実的な気分になって楽しんでもらえると思います。彼女が自分をまるでスーパーヒーローのように見立てているときに頭のなかで起こっていることであると同時に、外の世界でも実際にそれを経験している。そのような世界観が生き生きと描かれるのは、楽しいことでした。 ──リアは社会規範だけでなく、物理法則をも超えて抑圧的なシステムと戦っているかのようですね。本作の派手なアクションはどのように感じられましたか。 プリヤ:おっしゃる通り、リアは重力をものともせずに家父長制と戦うのです!(笑) 本作は、香港映画やカンフー映画、空手映画、ブルース・リー、『マトリックス』(1999年)などからインスパイアされていますが、特に『マトリックス』では、すべてが重力に逆らっていて、観客もそれに疑問を抱かないですよね。なぜなら、観客もその世界観に身を置いて、信じているから。『ポライト・ソサエティ』も同じように、心と頭をオープンにして、彼女が生きている宇宙に身を委ねなければなりません。その世界では、高々と空中後ろ回し蹴りを完璧にすることができる。不可能なことはないわけです。