マイナ保険証「一本化」は“個人情報のリスク増大”や“憲法違反”の問題も?…専門家が警告「それでも強行することの危険性」とは
12月に予定されている「マイナ保険証への一本化」について、その問題点を考えるシンポジウムが8月31日、東京、神奈川、大阪の会場とオンラインで開催された(主催:地方自治と地域医療を守る会、共催:東海大学政治学研究科、専修大学法学研究所、神奈川大学法学研究所、日本比較法研究所(中央大学))。 【画像】「マイナ保険証」利用率の推移 マイナ保険証については、国民に対し正確かつ十分な情報が伝えられているとはいえない。また、賛否いずれの立場からも、誤解に基づく情報発信や投稿がなされ、未だ情報が錯綜している。 本シンポジウムでは、「コンピューターサイエンス研究者」「医師」「地方公共団体の首長」「弁護士」といった分野の専門家が参加し、それぞれの観点から、マイナ保険証への一本化に関する問題点が指摘され、議論された。 今回は、本シンポジウムで指摘された「情報セキュリティリスクの問題」「法的問題」について取り上げる(後編/全2回)
マイナンバーカードは「外形的偽造」に弱い
国立情報学研究所の佐藤一郎教授(コンピューターサイエンス)は、まず、マイナンバーカード自体の問題として「外形的偽造」が容易であることを指摘した。 佐藤教授(国立情報学研究所):「マイナンバーカードで、電子的に本人確認を行うのに使われるICチップは、偽造困難で比較的安全性が高い。しかし、外形的な偽造に関してはほぼ無策に近く、簡単に真似ることができる。 去年ぐらいから話題になった事例として携帯電話の『SIMスワップ詐欺』(携帯電話の持ち主になりすまし、販売店にSIMを紛失したと申告してSIMを再発行させる詐欺)がある。 顧客にマイナンバーカードを提示させて身元確認をする際に、確認が不十分だったため、なりすましを見抜けなかったケースが多発した。 本来、マイナンバーカードに限らず、本人確認に使用するカード類は、外形的な偽造を防止する対策が紙幣以上に重要だ。しかし、日本では、紙幣については偽造防止技術を駆使しているが、身分証明書については比較的無頓着で、偽造対策はほとんど無策に近い。 マイナンバーカードを健康保険証として活用する理由付けの一つとして、『健康保険証は偽造のリスクがある』との指摘があったが、結果的にはマイナンバーカードも偽造が容易だ」 なお、この問題について、政府は6月に「国民を詐欺から守るための総合対策」を発表し、「オンライン等の非対面の本人確認方法を、原則としてマイナンバーカードのICチップを使用した方法に一本化する」とした。また、今後、そのために必要なICチップ読み取りアプリ等の開発を「検討する」としている。