ぬかるみに強い全地形対応…クボタが開発、搬送ロボットの実用可能性
クボタが開発中の全地形対応の搬送ロボット「KATV」が、このほど堺市美原区で開催した消防技術を競い合う近畿地区の指導会で、要救助者の救助で使うマットの搬入・搬出のデモに活用された。不整地でも台座の水平を保ったまま走行できるKATVは、土砂災害などでぬかるんだ現場に重機や資機材を運ぶ用途として期待されている。クボタはテスト機を堺市消防局に無償でレンタルし、実用可能性を探る。(大阪・池知恵) エンジン音とともに総重量100キログラムの救助用マットを乗せてKATVがスムーズに走行を始めた。少し離れた場所から消防隊員が遠隔で操作する。 傾斜地を想定したスロープの手前では、台座が少し上方に持ち上げられ、車輪の脚を斜面の角度に沿って上下に動かしながら、常に台座の水平を保つ。車輪をハの字に倒すとその場で旋回し、狭小地での方向転換も可能なことをアピールした。 KATVは20度までの傾斜地に対応可能で、整地から不整地モードに切り替えると傾斜などに合わせて自動で台座を水平に保つように制御される。ガソリン10・5リットルの満タンで3-4時間稼働でき、全幅1160ミリメートル、全長1550ミリメートル、重量は325キログラムで商用車バンや軽トラックで運べるコンパクトなサイズ。操作はKATVに搭載しているジョイスティックか、コントローラーで遠隔操作できる。 災害現場でKATVなどのロボットの活用が求められる背景には、2018年に発生した広島県の豪雨災害や、24年1月に発生した能登半島地震の教訓がある。土砂災害での傾斜地や水を含んだ土砂で足元が不安定な場所では、救助に必要なスコップや発電機、照明、ジャッキなどの資機材がなかなか運べず、救助までに多くの時間と労力がかかることが課題となる。 KATVの導入メリットについて、堺市消防局警防部警防課の金井武誌消防司令長は「隊員の疲労度軽減や要救助者の救助に、より時間を割けるようになる」と利点を述べる。クボタは6月中旬から1年間貸し出して課題などを抽出した上で、性能などを改善する。 KATVは元々、果樹園や林業への活用を想定して開発した。現在はテスト機約10台を使って消防局や果樹園などでテストマーケティングするほか、大学の研究用途にも提供している。 今後、電動化などの研究開発も進め「あらゆる需要に対応できるようにしたい」(クボタのグローバル技術研究所機械総合研究ユニット機械研究開発第二部第二チームの平岡実氏)としている。