「年金だけでは余生はムリ」…そんなの誰もがわかっているのに年金改革が進まない理由
残念ながら報告書は、マスコミに揚げ足をとられ、野党に政争の具にされ、効力を失いました。ところが実は、いくつか重要な指摘があったのです。今後、寿命が伸びて、退職金が減少傾向にあり、年金支給額が減ると予測される中で必要な3つの準備です。 ● 年金支給額が減る未来に向けて 私たちができる3つの準備 (1)適切なライフプランを立てること:「大学卒業、新卒採用、結婚・出産、住宅購入、定年、退職金と年金で生活」という古いライフスタイルではなく自分のプランを作る (2)「自助」の充実:望むライフプランや生活水準に合わせて、就労継続の模索、支出の再点検や削減、資産形成と運用など「自助」を充実させる (3)資産寿命を延ばすこと:以下、3つのライフステージに応じた対応を行う。現役期は、長期・積立・分散投資による資産形成。リタイア期前後は、退職金の有無もふまえたプラン再検討および、中長期的な資産運用の継続と計画的な取崩し。高齢期は、心身の衰えを見据えたプランの見直しや取引関係の簡素化、自分で行動できなくなった時の備え これらは、長い人生に備えた準備が必要という真っ当な内容です。 「自助が必要=今の年金政策に問題がある」という誤解が喧伝されましたが、今の高齢者でも年金だけでは生活全般をまかなえません。
厚労省の調査によれば、高齢者世帯の収入における公的年金の比率は66%です。残りは自助でまかなうのが普通です。今後も引き続き、自助の意識を高めて準備をする必要があります。しかし報告書が効力を失ってしまえば、こういった内容を推進する政策は不可能になってしまうのです。 ● 偏ったマスコミ報道と 「同調効果」で大きな話題に それにしても、なぜあれほどまでに2000万円の記事が話題になったのでしょうか。もちろん、偏ったマスコミ報道もその理由です。ただし、その一方で視聴者の心理の中にも、報道に注目してしまう原因があったのではないでしょうか。この心理について、行動経済学の視点で考えていきます。 第1に、行動経済学における「同調効果」が影響していると考えられます。これは個人が無意識に人と同じ行動を取ってしまう現象です。集団と同じ行動を取ることで安心を得ようとする群集心理によるものです。イェール大学の心理学者スタンリー・ミルグラムが、この同調効果を実験によって実証しています。その方法は次のようなものです。