今年の夏はちょっとお得な「ジパング倶楽部」で甲斐と駿河の小旅をした
【汐留鉄道倶楽部】猛暑続きで遠距離旅の気分にはなれない。ならば近場で、ということで7月に小旅をした。昨夏の北海道、札幌から納沙布岬までの根室線の大旅とは正反対の規模。 【写真】JRにとって不採算路線は経営上の「お荷物」。しかし、社会全体の利益という観点で捉えると、違った価値が…赤字ローカル線の存廃議論で欧州から学ぶべきこと
新宿から中央線で甲府、身延線で南下して富士へ。さらに東海道線で三島に出て東海道新幹線に乗り換えて東京に戻る、という富士山西南麓をぐるりと回る1泊2日の旅で、大月、富士宮、沼津の3カ所を途中下車駅に決め、各地の〝食〟を堪能することにした。ちなみに身延線は初めて乗る路線である。 新宿から特急「かいじ19号」の指定席に乗る。中央線オリジナルのE353系電車。速達型の特急「あずさ」と同一形式だが、「かいじ」は停車駅が多く途中の甲府止まり。終点松本までは「あずさ」だけが担当する。同じ車両の特急同士でこんな〝停車駅格差〟があるという点では常磐線の「ひたち」と「ときわ」の関係とも似ている。 約1時間乗って、まずは大月で下車して、目指すうどん店「吉田屋」へ。めったにお目にかかれない、かみ応え抜群の硬いうどんを食べたくて事前に探しておいた。8年前にわざわざ「吉田のうどん」を食べに大月から富士急行線に乗り換えて富士山駅あたりではしごをしたことがある。今回は富士急入りせず大月で「肉きんぴらうどん」を注文。これでもか、というくらいの硬めの麺にキャベツがのる。つけ汁は馬肉、キンンピラゴボウなどが入った甘じょっぱい味。うどんに合う。
以前、東京でも「吉田のうどん」が日暮里で食べられると知り、駅からかなり歩いて食べに行ったことがある。ほかにも東京にこんなうどん店はあるのだろうか。 大月はうどんのためだけに下車した。後続の「かいじ27号」で終着甲府へ。「勝沼ぶどう郷」とそのものずばりの駅など左側の沿線視界が開け、ブドウ畑が続くあたりは文字通り〝甲斐路〟らしい景色。約30分で甲府に着いた。 ちなみに「あずさ」でさらに1時間も乗れば塩尻に着く。ここから特急「しなの」に乗り換えて名古屋まで約2時間。すると新宿―名古屋は単純計算で4時間半程度となる。今回の旅を終えた後、東海道新幹線は保守用車同士の衝突事故や台風7号の影響で一部区間が運休となった。あまり話題にはならなかったが、中央線も大掛かりな迂回ながら新幹線の代替路線として役に立つのではないか、と思った。 さて翌日、甲府から身延線の始発ホームへ。JR東海の路線なのでJR東日本の中央線とはあたかも隔離されたかのような位置に置かれている。ローカル線とはいえ特急「ふじかわ」が甲府―静岡間に上下7往復もあるのは意外だった。乗車した「ふじかわ4号」はJR東海オリジナルの373系で飯田線の特急「伊那路」と同じだという。甲府を出ると大きく右カーブして中央線と離れ単線をひたすら走る。鰍沢口を過ぎたあたりから山岳区間に入り、急なカーブ、とても狭いトンネルが続く。ゆっくりと下っているような気がする。不思議なことに集落があまり途切れることなく続いている。車内も甲府から空席はほとんどない。身延線甲府―富士間88・4キロは結構需要があることがうかがえる。