大型車のタイヤ脱落が急増、昨年度は142件…巻き添え死傷も目立つ
走行中の大型トラックからタイヤが外れる事故が増え、巻き添えになった第三者が死傷するケースが目立っている。国土交通省によると、2023年度の脱落件数は過去20年で最多の142件に達し、11件だった11年度の約13倍だった。同省は不適切な整備が主な原因とみて、点検の徹底を呼びかけている。(青森支局 八巻朱音) 【図】一目でわかる…大型車のタイヤ脱落件数、このように推移している
ナットの緩み
「運行前の日常点検はしましたか」。青森市内の国道7号で14日に行われた街頭点検。自動車整備士らが、タイヤのナットが緩んでいないかを工具で確認した。
昨年12月1日、青森県八戸市の高速道路で大型トラックの左後輪(直径約80センチ、重さ約70キロ)が外れ、路肩にいた作業員2人が死傷した。ナットが外れており、運転手らが点検を怠ったとみられている。
同省によると、脱落はタイヤの装着から1か月以内に起きることが多い。冬用タイヤへの履き替え時期を迎え、青森運輸支局の原子雅重支局長は「適切な車輪の着脱と日頃の点検を徹底してほしい」と語った。
9割が左後輪
国内のタイヤの取り付け方式は10年に独自規格から国際規格に変わった。例えば左タイヤはナットを締める方向が左回りから右回りになり、国交省自動車整備課の担当者は「規格に合わせた整備が適切にできていない可能性もある」と指摘する。同省が脱落を起こした119台を調べると、多くでナットの緩みや劣化部品の使用が見られた。
23年度に142件あった大型車(総重量8トン以上など)のタイヤ脱落のうち、9割以上が負荷のかかりやすい左後輪だった。国交省によると、速度を保って右折すると、遠心力で積み荷の重みが左後輪にかかり、旋回が小さい左折時も、左後輪にねじれるように力が向かう。道路は排水機能を持たせるため路肩より中央部がやや高く、その分、左タイヤへの負荷が増える。
行政処分導入
タイヤが脱落した場合、歩行者などが直撃を受けることがある。脱落に伴う人身事故は、23年度までの10年間で25件起きている。