【解説】岡山市の再開発事業で相次ぐ計画の変更や遅れ 市民やまちづくりへの影響は?
KSB瀬戸内海放送
岡山市中心部の6カ所で古い建物を取り壊し、マンションやホテルなどに立て替える再開発事業が進められています。 しかし、このうち5カ所で工事が遅れるなど計画の変更が相次いでいて、まちのにぎわいづくりにも影響が出る恐れがあります。 岡山市とデータが似ている広島市の「建設物価 建築費指数」の推移を見る>>>>>>
岡山市中心部、蕃山町の再開発事業は2020年に岡山市から計画が認可されました。 計画では、商業施設とマンションを備えた18階建ての複合ビルと、子育て支援施設やオフィスなどが入る6階建ての複合施設が建てられることになっています。 2022年度に着工し、8月、工事が完了する予定でしたが……。 (記者リポート) 「現在は、再開発事業が一時ストップし、時間貸しの駐車場となっています」 約0.75haの敷地のほとんどが2024年4月、駐車場になりました。なぜ、計画が変わったのでしょうか。 (岡山市蕃山町1番地区市街地再開発組合/宮井宏 理事長) 「(ビルの着工時期が)延びることが確定したので、その間土地を遊ばせておくわけにいかず、少しでも(活用)ということで駐車場で借りていただいている」 再開発組合によると、背景にあるのは2025年4月に開幕する大阪・関西万博です。 関連する工事によって岡山での人手の確保が難しく、建設費も高騰しているため計画の変更を余儀なくされたということです。 (岡山市蕃山町1番地区市街地再開発組合/宮井宏 理事長) 「まさか、一社も受けていただけるゼネコンが見つからない状況になるのは想定していなかった。我々はコロナ前に当然、事業計画を想定してやってきたので、そのあたりの金額の想定も大幅に狂ってきた」 再開発ビルの工事の入札は、2022年11月以降、3回行われましたがいずれもまとまりませんでした。 再開発組合は費用を上乗せするなどし、2025年度中の着工を目指して調整を進めているということです。 これまでに岡山市中心部の5つの再開発事業を手掛け、蕃山町の再開発にも携わる事業者は、「今までになかった事態だ」と驚きを隠せません。 (角南不動産/角南総一郎 社長) 「どちらかというと、ゼネコンからぜひさせてくれと、こっちからお願いすることは一度もなかった。こちらからお願いしても難しいという状況は初めて。金額が上がってしまったので、これからちょっと当分岡山の再開発は今段取りされているもの以外は全部止まる可能性はある」 岡山市は、大阪・関西万博の影響がどこまであるかは分からないとした上で、別の再開発事業でも建設費の高騰による計画変更が起きていると話します。 岡山市が都市計画決定した再開発事業は蕃山町を含めて6カ所で行われていて、このうち5カ所で施設の規模の変更や工期の遅れが出ています。 残りの1カ所は、計画の詳細が元々決まっていなかったため、実質的には全ての再開発事業に影響が出ていることになります。 (岡山市 市街地整備課/服部義和 担当課長) 「どの地区も資金計画等苦慮しているのは事実。(費用を)想定しづらいというよりはできないと思う」 建設費がどの程度上がっているかを見ていきます。 一般財団法人建設物価調査会がまとめた広島市の「建設物価 建築費指数」の推移です。広島市と岡山市はデータが似ているということです。 2015年の集合住宅の工事費用を100として同じ建物を建設した場合のコストの変動を示していて、2020年が105.6、2023年が122.6です。3年間で約16%上昇していることが分かります。 岡山市によりますと、建設費の高騰によって事業者は「販売価格を上げる」「施設の規模や内装を変更する」などの調整が必要となり、工期の遅れにつながっているということです。 こうした状況について専門家は、市民や今後のまちづくりにも影響が出る恐れがあると指摘します。 (日本政策投資銀行 岡山事務所/長澤健一 所長) 「建設費が下がるというシナリオは楽観視できないという気がするので、分譲マンションの価格に転嫁されるということで市民の方が買いづらくなると思う」 日本政策投資銀行岡山事務所の長澤所長は、建設費高騰による施設規模の縮小などは全国で起きていて、岡山市中心部のまちづくりにも影響が出る恐れがあると指摘します。 (日本政策投資銀行 岡山事務所/長澤健一 所長) 「再開発事業者の採算が悪化して、事業の見直しや事業規模の縮小が必要となるケースもあると思う。内容が変更されたりすると、まちのにぎわいという観点でも間接的に市民に影響があるということも言える」 (岡山市 市街地整備課/服部義和 担当課長) 「中心市街地のにぎわいの創出というのが再開発事業で市が補助させてもらう一番の理念。今後も中心市街地のにぎわいの創出や、安全で快適な都市環境の創出、都市機能の充実強化などについて力を入れていきたい」
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