日本円の価値崩壊へのカウントダウン…国内全上場企業株「5割」を保有する“大筆頭株主”が打った「危険な一手」の行方に注目【経済のプロが警鐘】
日本円は世界から相手にされなくなりつつある
このように、日銀は債務超過に陥ることを避けるために、十分な利上げに踏み切れない状況にあります。今後想定されるのは、日本円が通貨としての信用を失うということです。日銀が金利を上げられず、インフレが加速してしまえば、日本円の価値は著しく落ちていきます。 行きすぎたインフレは「国民の資産の目減り」につながります。もちろん、インフレによって賃金や預金金利が上昇する可能性はありますが、時間がかかります。つまるところ、インフレのメリットを感じられるのは、借金を抱える人などごく一部の人にとどまるのです。 大多数の日本人がインフレで被害を受け、すでに日本で大きな資産を蓄えている富裕層にとっては死活問題となりかねません。
大手民間企業の株の半分を日銀が保有~「特殊すぎる」ねじれた日本経済~
2023年5月17日、日経平均株価が3万円台を回復しました。3万円超えは1年8ヵ月ぶりであり、日本経済に関しては珍しく明るいニュースとなりました。 しかし、日本の株価についても相変わらず不安材料が眠っています。というのも、日本の株価は〝官製相場〟と呼ばれており、日銀が日本の株式に莫大な投資を行った結果、この株価になっているからです。 日銀は、「株価安定」という名目の下、日本株式のETF(上場投資信託)の買い入れをつづけており、2020年3月まで時価31兆1,728億円ものETFを日銀が保有する事態になっています。『日本経済新聞』(2019年4月17日付)によると、日銀は今や上場企業23社の筆頭株主であり、しかも全上場企業の5割で上位10位以内の大株主なのです。日本の上場企業の多くが、ある意味で国営企業になりつつあるという、異常な状況が生まれています。 さらに、コロナ禍での株価安定のために、2020年3月16日に行われた金融緩和では年間6兆円としていたETFの買い入れ額を倍の12兆円まで引き上げました。そして、今では日銀が買い入れたETFの時価は51兆円強まで増えており、これは旧東京証券取引所第一部の株式の時価総額の約7%に相当する水準です。 前述したとおり、日銀は利上げに踏み切れず、保有している国債からの金利には期待できません。そのためETFからの収益は日銀の経常利益を支える重要な柱となっているのですが、株価が急落してしまえば、日銀は危機に陥る可能性があります。ETFは時価評価されることになっているので、簿価を下回れば損失に相当する引当金を計上しなくてはなりませんから、株価の下落によって日銀の財政は赤字に転落してしまうのです。