子どもの宿題に“手を加える”のは「権利侵害」? 夏休みの宿題、親や先生が気をつけるべき法律問題
学校でペンネームつかっても良い?
キミが作品(コンテンツ)を展覧会やコンクールに出すときに、キミの名前を出すかどうか――。これを決めることができるのもキミだけです。原則として保護者も先生も決めることができません。 著作権の大きな柱である「著作者人格権」には、作品の作り手だけが持つ「氏名表示権」があります。これは作品を多くの人に知らせるとき、見せるときに、作った人の名前(氏名)を出す(表示する)か、出さない(表示しない)かを決める権利です。 図工の時間に描いた水彩画が、学校以外の人も通行する学校の玄関に飾られる場合、その絵に作り手の名前を付けるかどうかは大きな問題ですよね。名前を出してほしいと思う場合もあれば、「名前なしで」と願う場合もあるでしょう。 もしもキミがペンネーム(あるいは絵を描くときの名前)を持っていれば、「〇〇の名前でお願いします」と要求することができます。 SNSの時代、小学生でもハンドルネームを持っています。絵を描くときに使う専用の名前を子どもが持っていてもおかしくないと私は思います。 著作権の考え方からすると、コンテンツにどのような名前を付けるかは作者だけが決めることができるのです。 氏名表示権があるおかげで、一般市民が本名を使わずに活躍できる場面があります。銀行員がペンネームでヒット曲を書き続けた例がありました。多くの芸能人は芸名で出演していますが、本名でない方が活動しやすいのでしょう。
先生に「手直し」されない権利とは?
「著作者人格権」の3つ目は、コンテンツを勝手に作り変えられないようにする「同一性保持権」です。 キミが描いた絵を、キミの許可なくほかの人が勝手に、修正したり、描き変えたりすることはできないという権利です。同一性(同じであること)を保持する(キープする)権利は作り手のキミだけが持っているのです。 たとえばキミが卒業文集に載せる作文を「サクラ」とカタカナ書きを選んだとします。それを先生がキミの許可のないまま「桜」や「さくら」と書き換えることはできません。同一性保持権があるからです。キミが、「サクラ」とカタカナを選んだのは理由やコダワリがあるのではありませんか。 「先生が粘土細工に指を入れて、手直しした」「(高校入試の)合格体験記を中学の先生に送ったら、都合よく直された」というケースも同じです。 以上、著作者人格権の3つを見てきました。学校では、著作権を気にしなくてよい場合も多いのですが、「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」などの作り手のハートを守る著作者人格権は、たとえ学校という環境の中であってもこれに当てはまりません。 学校でも教室でも「子どもにも人権がある」というのが著作権法の基本姿勢だからです。著作者人格権を気にしすぎると、「授業がなりたたない」とこぼす先生は多いと思います。作文を読み上げたり、水彩画や粘土細工は、さっと手を入れたりするのが指導上、やりやすいと考えるからです。 だけど、子どもが作ったコンテンツを扱う場合、先生から子どもに一言、「ちょっといいかな」と許可を得る姿勢がほしいところです。
宮武久佳