イスラエルのジェノサイドに加担したバイデン政権。ホロコーストの教訓は「誰に対しても」生かされるべきである
バイデンの責任
アメリカ大使館のエルサレムへの移転など、露骨に親イスラエル政策を進めた前共和党政権のトランプに対し、バイデンは相対的には、パレスチナ人の人権にも配慮する政治家と見る向きもある。 しかし、彼の長い政治キャリア、さらには生い立ちを見ていくと、「シオニスト」を自称してきたことが示すように、バイデンにはイスラエルへの深い共感や思い入れがあり、そうした個人的な心情がこの局面でイスラエル支持をさらに強力に後押ししている、そう考えざるをえない。 2015年、当時オバマ政権の副大統領だったバイデンは、イスラエルの独立記念日に次のような演説を行なった。それは今日まで変わらないバイデンのイスラエル観をよく表している。 私がイスラエルを愛していることは誰もが知っている。……1948年5月14日の真夜中、あらゆる困難に立ち向かい、焼けつくような悲劇に見舞われ、圧倒的な数の軍隊が国境に集結する中、これに立ち向かい、近代イスラエル国家が誕生しました。……もしイスラエルがなかったとしたら、アメリカはイスラエルを作り出さなければならない、……イスラエルは、世界中のユダヤ人の安全保障のために絶対に不可欠な存在です。……もしイスラエルが攻撃され、圧倒されたとしたら、私たちはあなたのために戦うことを約束します。…… バイデンのこの言葉には、1948年5月14日の翌日が、パレスチナ人にとっては虐殺と強制移住という「ナクバ(大災厄)」と記憶されていることへの配慮が一切ない。これに続いてバイデンは、「私にとって、イスラエルの安全保障を守るというコミットメントは、単なる政治的、国家的利益ではなく、個人的なものだ」と明言した。
バイデンのイスラエルびいきは筋金入り
その言葉どおり、バイデンのイスラエルびいきは筋金入りだ。ペンシルベニア州スクラントンに生まれたバイデンは、イスラエルを断固支持するカトリック教徒の両親のもとで育ち、イスラエルへの尊敬の念を植えつけられた。 バイデンの回顧によれば、父親はよく、「1930年代、ホロコーストを前に世界がいかに黙って傍観していたか」について話していたという。バイデンの子どもはユダヤ人と結婚し、ユダヤ人の孫がいる。 バイデンはすべての子どもと孫について、14歳に達した時、ドイツにあるダッハウ強制収容所を訪問させてきたと語っている。ユダヤ人の強制収容のみならず、人体実験なども行なわれた場所だ。 1973年、若き上院議員だったバイデンは、イスラエルを訪問し、当時の首相ゴルダ・メイルと会談した。これを皮切りに、バイデンは歴代のイスラエル首相と会談し、関係を構築してきた。 バイデンがイスラエルに到着して最初に訪れたのはホロコースを記念するヤド・ヴァシェムであり、ここでも「二度とホロコーストを繰り返してはならないという誓いを新たにした」という。 そのキャリアを通じてバイデンは、イスラエルの軍事行動に常に理解と支持を与えてきた。それがたとえ、市民を巻き込むものであっても、である。 1982年、イスラエルがレバノンに侵攻した数日後、訪米したイスラエルのメナヘム・ベギン首相が上院外交委員会の場に現れた。レバノンでのクラスター爆弾による民間人殺害について複数の議員たちから追及された際、立ち上がり、非常に熱のこもった演説でイスラエルを強力に擁護したのがバイデン だった。 帰国したベギンはその時の模様について次のように語っている。「バイデンは、我々よりさらに踏み込んだ主張を展開し、イスラエルを侵略しようとする者に対しては、たとえ女性や子どもを殺すことになろうとも、力強く撃退すると述べた」。 このバイデンの発言は、右派政党リクードの創設者ベギンに強い印象を残した。結局、当時の大統領ロナルド・レーガンがベギンに電話をかけ、レバノンの首都ベイルートの制圧を断行するならば、「我々の将来の関係全般が危険にさらされる」と強い口調でその中止を求めた。 この時、レーガンは、意図的にホロコーストという言葉を使い、「今やその象徴は、腕を吹き飛ばされた生後7カ月の赤ん坊の絵になりつつある」と強く迫ったという。その20分後、ベギンから電話があり、砲撃の中止を命じたと告げられた。
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