パリ五輪で「突出するドーピング検査数」に不満募らす中国
さらに、過去のドーピング違反に加え、現在の中国という国家が、「国際社会共通のルールを守っていない」という目は、少なからずある。これは事実だ。南シナ海や東シナ海での海洋進出は分かりやすい。また、ウクライナへの戦争を仕掛けたロシアを多くの国が非難する中、そのロシアとのビジネスを活発化させ、ロシア経済を支えている。中国の競泳チームへのドーピング検査の徹底は、そんな国際社会からの目と連動しているようにも思えてしまう。 とはいえ、中国のファンは、やはり受け入れられないだろう。「中国だけが狙い撃ちにされている」「不公平だ。我々は見下されている」。――。中国のインターネット上にはそんな声があふれている。そこには近現代史において、「欧米や日本から食いものにされてきた」「自分たちはずっと被害者だった」という歴史に絡んだ感情も背景に存在する。そんな感情は「だから、強くなければならない」という、狭い意味での愛国主義と容易に結びついてしまいがちだ。パリ五輪では、競技会場の外でも、さまざまな“戦い”がある。 ■◎飯田和郎(いいだ・かずお) 1960年生まれ。毎日新聞社で記者生活をスタートし佐賀、福岡両県での勤務を経て外信部へ。北京に計2回7年間、台北に3年間、特派員として駐在した。RKB毎日放送移籍後は報道局長、解説委員長などを歴任した。
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