埼玉・深谷で「映画と珈琲」を楽しむレトロ散策のすすめ 酒蔵建築や映画ロケ地で「時空を旅する」気分に
しかし、別店舗ではコーヒー豆の焙煎が難しかった。いつか焙煎機を置いたコーヒーに特化した店をやりたいと心に秘めていたときに、五十嵐氏は七ツ梅と出会う。 「まるで世界遺産のような場所だと心を射抜かれた」 すぐに五十嵐氏は出店を決めて、2店目はコーヒー専門店としてオープンした。熱風式の焙煎機であぶられたコーヒー豆は、ふわりとフルーツのような香りが際立つ。 豆はエチオピア産の無農薬豆を主流として五十嵐氏がよりすぐったものを扱う。
口にすると広がる味わいはまるで紅茶のような華やかさと柔らかな味わい。喉を通ると口元に残るのはフローラルな香りだ。 「今まで紅茶やハーブティーしか飲めなかったが、スペシャルティコーヒーをきっかけにコーヒーが飲めるようになったという人が多くいらっしゃる。この体験をぜひ味わってほしい」と五十嵐氏はコーヒー文化をこれからも伝え続けていく。 旅をするとき、定番どころではない観光地にあまり目を向けることがないかもしれないが、土地ごとに知られざる歴史や文化が眠るものだ。一度その魅力を知ると、より深く知ろうと再び街に訪れたくなる。手触りのある文化に触れる、小さな旅ならではの魅力を味わってみてほしい。
永見 薫 :ライター