埼玉・深谷で「映画と珈琲」を楽しむレトロ散策のすすめ 酒蔵建築や映画ロケ地で「時空を旅する」気分に
市民からは『酒蔵を使ってシネマなんて難しいのでは?』という反対もありましたが、この景観を残したかった。その思い一筋で立ち上げました」 シネマは2010年に補助金を活用してリノベーションし、オープン。シネマのある蔵は基礎のない建物だったため、設計士は使える柱を残して補強した。 名誉館長として故・大林宣彦映画監督がサポートをするなど、映画界の著名人に支えられてきた。以降は、NPOが運営している。 小林氏は「深谷シネマがオープン後、七ツ梅を盛り上げようとさまざまな店舗が集まった。この場所に魅力を感じて、『この場所で店をやりたい』と移住してきた人もいるほど。
市民たちがこの場所を愛してくれていることが嬉しい。これからも大切に維持し、多くの人の目に触れてほしい」と胸の内を明かしてくれた。 ミニシアターには独自の魅力がある。穏やかな空間で、〝これぞ”という作品に心をどっぷり捧げて観る時間。その悦楽を求めて遠方からも足を運ぶ人が多い。ふらっと日帰りでタイムスリップする時間は何にも代え難い。 ■酒蔵の敷地内をねり歩き、ロケ地の雰囲気を味わう シネマ1つだけでも悠久の時を味わえるが、足を延ばして少し散歩を楽しみ、映画の余韻を味わいたい。
あちらこちらにサインや造作物がある一角がある。このエリアは映画のロケ地としても多用されており、セットがあえて残してあるからだ。 ■香り高いコーヒーを手作りスイーツとともに味わう まるでシネマの主人公として街を歩いているかのような気分になる。そこに立ち並ぶのが個性的な飲食店、雑貨店や伝統芸能品を扱う店にワークショップスペース。 そして、疲れたら足を運びたいのが「50 COFFEE & ROASTERY」。世界各国からよりすぐったコーヒー豆を、その場で焙煎し提供するスペシャルティコーヒー店だ。
高さ3メートル以上のある吹き抜けが気持ちいい空間は、酒蔵の瓶詰め工場だった場所。ここにアメリカ製の大きな焙煎機がある。 18年前から市内の別の場所でカフェレストランを始めた五十嵐智氏。もともとコーヒーに関心が高かった氏は、20代の頃に初めて口にしたエスプレッソに感動。 「これは習わないわけにはいかない、みんなに飲ませたい」と浜松町にあるエスプレッソマシンメーカーが主催する、コーヒーセミナーに幾度も足を伸ばしたのは今から30年前のこと。セミナーで試行錯誤したあとは、前職を辞した後にそのまま独立。