役職定年の中高年男性 何をしていいのかわからず高ストレス 妻との関係は「×」 趣味も友もなし…解決策は?
産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
精神科産業医として45年以上のキャリアを持つ夏目誠さんが、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。 【図表】うつ病にならないためにやめておきたい7つのこと
精神科産業医として来談者の相談や会社で実施するストレスチェックの高ストレス者面談、管理職研修などで話を聞く中で、役職定年や定年後雇用の方から「何をしたらいいかわからない」という空虚感を訴える話をしばしば耳にします。給料が減ってもこれまでと同じ会社で働き続けられるのは、一面では恵まれた立場のように思えますが、心の中は人それぞれ。そんな例を紹介します。
57歳、役職定年になって部下がいなくなり
メーカーで資材の購入を担当する購買部次長で57歳の役職定年を迎えた西口さんが高ストレス者面談に訪れました。 産業医 : チェックシートでの結果を見ると、心身不調の訴えが多く、職場のサポートが少ないとなっています。何か、仕事の悩みがあるのでは? 西口さん: 購買部次長の時、先生の管理職研修を3回くらい受けたことがあります。3か月前に役職定年になり、今は特任購買担当という立場です。 産業医 : 担当? 西口さん: 部下だった次長の下で担当職務をすることになったのです。 産業医 : 役職定年は、悩ましい制度ですね。立場がガラッと変わるわけですから。それでどうしました? 西口さん: 何をしていいかわからないのです。 産業医 : どういうことですか。 西口さん: 係長になってから次長まで、役職者として25年も働いてきましたが、ここに来て、部下がいなくなりました。それに担当する業務はそれほど重い仕事ではありません。 産業医 : そうですか。 西口さん: (当惑した表情で)定年まであと3年、その後は嘱託社員として5年働いて退職というのが、基本的な道筋だということは、頭ではわかっていますが……。 産業医 : それで。 西口さん: 与えられた仕事はまあ、簡単に終わるので定時退社です。勤務時間中、それから勤務後も何をしたらよいのか。 産業医 : 役職定年から嘱託、そして退職の時期は、社員の立場から言えば、仕事中心から自分の生活へ比重を移していく準備期間と考えることができます。