藤井聡太棋聖「永世称号を最初のチャンスでつかむことができてよかった」 21歳11カ月史上最年少で永世称号資格/将棋
将棋の藤井聡太棋聖(21)=竜王・名人・王位・王座・棋王・王将との7冠=に山崎隆之八段(43)が挑戦するヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負(主催・産経新聞社など、特別協賛・ヒューリック)の第3局が1日、名古屋市の「亀岳林 万松寺」で指された。藤井棋聖が100手で勝利し、3連勝のストレートで5連覇を達成し、地元の愛知で自身初の永世称号の資格を獲得。中原誠十六世名人(76)が23歳11カ月で獲得した史上最年少記録を53年ぶりに大きく更新する快挙を達成した。 【写真】勝利した藤井聡太棋聖(右)と敗れた山崎隆之八段 時折、雨脚が強まる名古屋で、前人未到の道を歩み続ける藤井棋聖が、荒天に負けない〝強さ〟で本領を発揮。21歳11カ月で新たな金字塔を打ち立てた。 中原十六世名人の最年少記録を更新したことを聞かれると「いや、そこは意識していませんでしたが…永世称号を最初のチャンスでつかむことができてよかった」と安堵の表情を浮かべた。 6月6日の第1局から2連勝で、王手をかけて臨んだ第3局。序盤、両者は飛車先の歩を突く戦法、相掛かりで勝負。指し手の選択肢が広く、独創的な棋風で知られる山崎八段の得意戦法だ。 膠着状態の中盤、52手目△4四角で急所を突き、徐々にペースを握ると、相手の金と玉に迫る58手目△7七歩、62手目△8二銀の飛車角両取りなどの厳しい攻めで山崎八段を1分将棋に追い込んだ。「激しい戦いになるとよくないので、そのあたりの判断が難しかった」。粘りからの逆転も真骨頂である山崎八段を最後まで警戒して勝利につなげた。 愛知県瀬戸市出身の藤井棋聖にとっては地元対局。万松寺は人気スポット、大須商店街にあり、尾張の戦国武将、織田信長の父、信秀が織田家のぼだい寺として建立。本堂前にはファンの「藤井棋聖が防衛できますように」の短冊もあり、その願いも後押しした。6月20日に叡王戦で敗れて初めて失冠後、初の対局だったが、この日までに美容院で散髪するなど心機一転の工夫をみせた。 棋聖戦では2020年の第91期で史上最年少の17歳11カ月で初タイトルを獲得。「思い出も多い棋聖戦で永世称号を獲得できたことはうれしく思う」と喜びをかみしめた。