中国軍の情報化をめぐる蹉跌――戦略支援部隊の解体と情報支援部隊の設置は何を示すか
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2024年4月19日、 習近平 国家主席は、2015年年末の軍改革で設置された戦略支援部隊を解体し、情報支援部隊、軍事航天部隊(宇宙)、ネットワーク空間部隊(サイバー)の三つに分割することを明らかにした。軍事航天部隊は戦略支援部隊航天系統部を、ネットワーク空間部隊はネットワークシステム部を引き継ぐものとなるほか、戦略支援部隊情報通信基地を中心として情報支援部隊が新たに設置された。情報支援部隊は、「情報リンクを円滑にし、情報資源を統合し、情報保護を強化し、全軍統合作戦システムを統合し、情報支援を正確かつ効率的に実施し、各領域における軍事闘争を保障する」ことがその任務とされている。 なぜ中国は鳴り物入りで導入した戦略支援部隊をわずか8年で解体したのだろうか。これについて、これまで反腐敗運動のあおり、指揮統制関係の明確化、智能化戦争に合わせたものなどの要因が指摘されてきた。もちろんこれらにはそれぞれ説得力があるし、そもそも現段階で確実な答えを得ることは不可能である。ここでは、戦略支援部隊を解体しなければならなかった固有の問題とは何か、という点に注目する。 問題をより明確化するには、以下の二つの問題を考えなければならない。すなわち第一に、サイバー、電磁波、宇宙といった情報関連の作戦領域を総合的に扱う戦略支援部隊は、中国の情報に対する包括的アプローチを示す存在であった。これをなぜサイバー戦と宇宙に分割したのかという問題である。第二に、戦略支援部隊を分割する中で、なぜ情報支援部隊を立ち上げたのか、情報支援を特別に重視する理由は何か、という問題である。
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山口信治