発達障害ある子どもたち、楽しく食育…企画した母親「自分で作ったものを食べられたら自信になる」
発達に特性がある子どもたちが食について学ぶ「子ども食育ラボ はぐもぐ」が毎月、福岡市早良区で開かれている。料理を作るなど将来役立つ力を身に付けてほしいと願う母親2人が企画。周囲の目を気にせずに学べることで、子どもたちの自信につながり、親子の居場所にもなるような場を目指している。(江口朋美) 【写真】音や光に過敏な人向けに九州国立博物館が作成した「あんしんマップ」
9月上旬、同区の原公民館で、小学生とその親たち約20人がおにぎり作りに挑戦した。話を聞くだけでは理解しにくい特性を持つ子もいるため、壁には「3本のゆびに塩をつける」「お米のまん中にあなを作る」など、具体的な手順をイラストとともに張り出した。
発達障害には自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)などがあり、行動や態度に特徴がみられる。「はぐもぐ」では、それぞれが理解しやすいように工夫し、感覚が敏感でお米などを直接触るのが苦手な子のためにビニール手袋も用意している。
参加した男児(10)はASDとADHDと診断されている。感覚過敏で手にまとわりつく素材を嫌がり、白米を食べるのも苦手だが、この日は自分で握ったおにぎりを頬張った。母親(38)は「みんなが一緒だったから、食べられたのだと思う。途中で泣いてしまったけど、見守ってくれたのでありがたかった」と、ほっとした表情を見せた。
「はぐもぐ」を企画したのは、ともに発達障害児を持つ同市の椛嶋友佳里さん(40)と辻真央さん(37)。子どもが同じ学校に通っている縁で知り合った。当事者として思い悩んだ経験から、悩みを共有できるランチ会を開いたり、登校できない子どもたちの居場所を定期的に設けたりして発達障害児やその親たちを支援している。
料理は手先を使い、様々な工程を同時進行しなければならないため、それぞれの特性に応じて発達を促す療育にも重要という。ただ、2人には、子どもが集団行動を苦手としたり、感覚過敏があったりして、一般的な食育イベントへの参加に苦労した経験があった。