福知山の水害の記憶を刻む治水記念館 国の「防災資産」に認定
水害の歴史や防災対策の大切さを伝える京都府福知山市下柳町の市治水記念館が、内閣府と国土交通省が今年5月に創設した「NIPPON防災資産」として、他の21件とともに初認定され、19日に同館で認定証伝達式が開かれた。運営する市は「運営に協力している地元の柳菱クラブの会員のみなさんも喜んでおられ、励みになると言われています。防災の啓発ができるようさらにアピールしていきたい」としている。 同防災資産は、災害の状況を伝える施設や教訓を伝承する活動などを認定する制度で、認定期間は4年間。認定することで、災害リスクを自分事とし、主体的な避難行動や地域の防災力の向上につながることや地域の活性化を期待している。 今回、選定委員会が審議のうえ、140件の候補の中から「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター(神戸市)」など特に優れている優良認定11件、治水記念館や「雲仙岳災害記念館(長崎県島原市)」など認定11件を選んだ。
築140年超の町家 洪水対策の仕掛けも
治水記念館は、1880年(明治13年)に建てられた由良川沿いにある元呉服屋の町家で、1953年の台風13号による「28災(水)」など幾度となく水害に遭った建物。木造2階建ての母屋、土蔵、離れがあり、国交省福知山河川国道事務所と市が共同で整備し、2005年3月にオープンした。 洪水時に家財道具などを守るため、滑車で階上へあげる「タカ」と呼ばれる仕掛けがあり、荷物の上げ下ろしを体験できるのが特徴。これまでに小学生の社会見学や観光客ら約6万2600人が来館している。 認定証伝達式では、近畿地方整備局の常山修治河川部長が、「当時の水害のときのつらさが実感できる施設です。28年の水害のつらさ、そのときはどうすべきだったかということを50年、100年後に語り継ぐ施設になれば」とあいさつ。福知山河川国道事務所の大西民男所長は、水害対策が施された状態で残っていることや、被災者の体験を語る映像が放映されていることなど同館の認定理由を紹介した。 常山部長から認定証プレートを受けた大橋一夫市長は「28災から50年を経過したことから、災害の記憶をしっかり刻み込んで将来の糧としていくということで、住民や地域、自治体が一体となって治水、防災対策を考え、ともに行動していきたいという思いを持って開館した。この施設を今後もしっかりと活用し、水害と水防の歴史を語り継ぎながら地域の防災力の向上につなげたい」と力を込めた。