公明党と「全面対決」する日本維新の会、3回目の「大阪都構想」挑戦はあり得るのか 組織運営は「カリスマ頼み」から「何でも直球勝負」へ
日本維新の会が次期衆院選に向けて、公明党と関西で全面対決する準備を整えた。これまでは公明党の現職がいる大阪、兵庫両府県の計6小選挙区に候補者擁立を見送ってきたが、方針を転換し、対立候補として新人6人を立てると決めた。本拠地・大阪の4選挙区では選考に「予備選」を導入。その目的は意思決定過程を透明化して、党内に不満をため込まないようにすることだ。創業者として、強力なリーダーシップで党の意見をまとめてきた松井一郎前代表が今年4月に政界を引退し、従来の「カリスマ頼み」の組織運営からの脱却を模索する姿が垣間見える。 これまで公明党に一定程度配慮してきたのは、大阪市を廃止して特別区を置く「大阪都構想」の実現への協力を引き出すためだった。導入の是非を決める住民投票の実施には賛同を得たものの、結果は2回とも大阪市民によって否決された。それでもなお、維新共同代表の吉村洋文大阪府知事は「看板は降ろしていない」と強調する。公明との対決姿勢に転じた中でも「3回目」への挑戦はあり得るのか。取材を進めると、その動向は「吉村知事次第だ」という声も聞こえてきた。(共同通信=木村直登)
▽地元が抑えられない 6月25日。大阪市中央区の日本維新の会本部では常任役員会が開かれていた。終わって出てきた馬場伸幸代表は、記者団に公明党との全面対決を宣言した。「党の方針は決めた。公明党と協議することはない」。新たに候補者を擁立するのは大阪3、5、6、16区と兵庫2、8区。いずれも公明党にとっては「常勝関西」の象徴ともいえる衆院小選挙区。維新は前身の政党時代を含めて一度も候補者を擁立したことがなかった。 大阪市長だった松井一郎氏が率いた間、維新は大阪市議会で過半数に届かなかった。「大阪都構想」の是非を問う住民投票を実施するには大阪府議会、大阪市議会両方で過半数の賛成が必要で、このためには他会派を取り込む必要があった。衆院選で公明党の現職がいる選挙区への進出をちらつかせつつも踏み込まなかったのは、協力を引き出す駆け引き材料という意味合いが強かったためだ。 松井氏は古巣である自民党の幹部や、長く官房長官を務めた菅義偉前首相ら官邸中枢との間に築いた個人的な親交を政策の推進力に変え、2025年大阪・関西万博や、カジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の大阪誘致に道筋を付けてきた。松井氏の判断は維新の政治力と直結していただけに、大阪府議はその影響力をこう分析していた。「誰も逆らえない」。松井氏自身も昨年9月、共同通信のインタビューで自ら認めている。「僕はどちらかと言うとトップダウンで、ある意味、強引に進めてしまう」