公明党と「全面対決」する日本維新の会、3回目の「大阪都構想」挑戦はあり得るのか 組織運営は「カリスマ頼み」から「何でも直球勝負」へ
ただ、当時から「選択肢を示すべきだ」という主戦論は党内に根強く、松井氏の引退後も公明党への「配慮」を同じように続けた場合は「地元を抑えられなくなる」(党幹部)という懸念があった。 ▽「何でも直球勝負」へ 方向を決定付けたのは、今年4月の統一地方選だ。維新の母体である、政治団体・大阪維新の会は知事選、大阪市長選、府議選、大阪市議選で大勝し、市議会では初めて過半数に到達。府議会、市議会両方で過半数を得たため、他党の協力がなくても住民投票の実施を議決できる力を握った。大阪維新幹部はここが分岐点だったと語る。「これで公明党に選挙区を譲る大義名分はなくなった」。公明党サイドでは、東京で日本維新の会に組織票を回す代わりに、関西6選挙区の一部で維新に擁立を見送ってもらう策も浮上したが、松井一郎氏という交渉窓口を欠く維新にこうした提案を受け入れる素地はなくなっていた。 選挙を重ねるごとに組織が拡大し、300人以上が所属する本拠地の大阪では、国政進出をもくろむ地方議員も多い。2021年衆院選で各党が獲得した比例票を基に今回、対象となる大阪4選挙区を見ると、公明党が2万~3万票台なのに対し、維新はその倍以上。公明党が支援を期待する自民党の比例票を合わせてもなお、維新には届かない。4選挙区は維新の候補者にとって、選挙戦を有利に運べる可能性が高いことを意味する。組織内では「プラチナチケット」とも呼ばれるだけに、現執行部が一方的に候補者を選べば「選考がブラックボックスだ」と反発が起きるのは必至だった。
維新は結局、7~8月に各選挙区内の一般党員らを有権者とする予備選を実施し、現職参院議員2人、地方議員2人を新たに立候補予定者に決めた。大阪のまとめ役を松井氏から引き継いだ吉村洋文知事は「選考の透明性が高く、公平、公正だ」と意義を強調し、自身や馬場伸幸代表の一存で決めたのとは違うと力説した。一方で、あるベテラン議員は現状について異なる見方を披露する。「松井氏のような『寝業』が使えなくなった」。政治力のあるリーダーが十分な根回しによって異論を封じ、意中の人物を候補者に決めるような手法が採れず、結果として選択肢が「予備選しかなかった」というのが実情だった、ともいえる。 今後の党運営について、維新のある幹部はこう見通す。「しゃくし定規になるかもしれないが、何でも直球勝負で物事を決めていくしかない」 ▽勝因は「相手の自責点」 大阪都構想が三たび注目されるようになったきっかけも、4月の統一地方選だ。