公明党と「全面対決」する日本維新の会、3回目の「大阪都構想」挑戦はあり得るのか 組織運営は「カリスマ頼み」から「何でも直球勝負」へ
一方、大阪府全域を対象にするべきだ、という意見の根拠はこうだ。「過去2回負けているのだから、同じ論法で民意を問う理屈が立たない」。ところが、投票範囲を広げるには根拠となる大都市地域特別区設置法の改正が必要になる。次期衆院選で野党第1党となり、今後3回以内の衆院選の間に政権を獲得する、というのが日本維新の会の計画だが、現状では維新に単独で法改正を実現する勢力はない。公明党との対決姿勢を鮮明にした中で、思い描くような道を進むためのハードルは相当に高い。ベテラン議員は指摘する。「今の維新の実力では住民投票の実現までに何年かかるか分からない」 ▽「吉村知事がやると言えば…」 大阪都構想を巡っては、もう一つ大きなジレンマがある。日本維新の会の看板である吉村洋文共同代表の発言だ。大阪維新の会代表も務める吉村氏は、2020年の住民投票で「敗北」した後に「僕自身が都構想に挑戦することはもうない」と宣言した。今年4月の記者会見で3回目に含みを持たせる発言を繰り返した時も「当時の発言は撤回していない」と強調した。都構想に向けた議論を再始動させる場合、発言の整合性を付ける必要がある。
今年4月の知事選で、吉村氏は主要公約に「2025年大阪・関西万博の成功」と「教育無償化」を掲げた。万博は予定通りの開催なら2025年10月に閉幕し、教育無償化の中核となる「私立校も含めた高校授業料の完全無償化」は2026年度に全学年で実現する見通しだ。いずれも現任期の2027年4月までに達成されることとなり、吉村氏にとっては政治家としての大きな区切りを迎えることになる。かねて吉村氏はこう語っている。「政治家は公約の実現に向けて全力を尽くし、走れるところまで走ったら屍だ。その屍を次のメンバーが乗り越えていくことで社会が良くなればいい」。8月下旬には記者団に「屍になったら僕は自由奔放に生きていきたい」とも漏らした。 3回目の都構想が動き出した時、そこに吉村氏の姿があるのかどうかは未知数だ。ただ、過去2回の住民投票でも主軸として活動し、思い入れも強い吉村氏が、少なくともその道筋を付ける役割を担っていると見る関係者は多い。ある幹部はこう断言する。「吉村氏がやると言えばやる心構えはできている。あとは吉村氏次第だ」