米、医療保険に批判噴出 「治療費支払い拒否」で不満 会社幹部殺害事件
【ニューヨーク時事】米国で医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの幹部が射殺された事件を受け、同業界に対する批判が噴出している。 【写真特集】止まぬ銃乱射事件 殺人罪で起訴された男は、米国の病院で治療を受けると、保険に加入していても患者が多額の治療費を払うことが少なくない実態を問題視していたとみられている。事件をきっかけに、インターネット上では保険業界への反発が強まり、犯行を擁護する声すら広がっている。 検察当局は17日、ルイジ・マンジョーネ被告(26)が4日、ニューヨーク市マンハッタン中心部の路上で幹部を銃で射殺したとして、殺人罪などで起訴したと発表した。報道によると、被告は裕福な家庭で育ち、名門大学を卒業した。拘束前に作成していた文書で、「(保険会社が)米国を搾取して、莫大(ばくだい)な利益を得ている」と主張。自身が保険金の受け取りでトラブルを抱えていたかどうかは不明だが、保険会社を「寄生虫」と呼び、業界を厳しく批判していた。 米国では、日本のような国民皆保険制度が存在しない。公的保険の対象は高齢者や低所得者らに限られ、多くの人々は民間保険に加入している。しかし、保険会社が費用の請求を却下したり、すぐに支払いに応じなかったりする例が増えているという。 警察幹部は記者会見で事件について「英雄的行為ではなく、無分別な暴力だ」と非難した。だが、SNSでは「保険金の支払いを拒否して、保険会社はなぜ訴追されないのか」などと被告に賛同する書き込みが目立つ。ネット上で被告の裁判費用の寄付を呼び掛ける動きも出ている。 ユナイテッドヘルスのウィッティ最高経営責任者(CEO)は13日、ニューヨーク・タイムズ紙(電子版)に寄稿し、「医療制度が本来あるべき形で機能せず、人々が不満を抱いていることを理解している」と表明した。ただ、同社は具体的な改善策を示しておらず、多くの米国人の不信感を払拭することは容易ではなさそうだ。