【対策失敗?】義母が資産1億円以上あります。富裕層と中間層で相続税対策の気をつけるポイントを教えてください!
中間層の方が見落しがちな相続対策
<亡くなる前の口座引出し> 病気などで余命が限られてきたときに、その人の銀行口座から本人やその親族がまとまったお金を引き出しておくことがあります。その金額がお葬式費用よりかなりの上回った金額になってしまい、自宅での現金保管や銀行の金庫に入れておいたり親族名義の銀行口座に移し替えたりするケースがあります。 ご本人が亡くなって相続の開始となったときに一見すると亡くなった方の預金口座残高が減少していますが、相続評価の視点が見落としがちです。事前に引き出して保管しておいたお金は本人が生前に使っていた金額を除き、『現金』として相続財産を構成します。従って相続税申告上の課税財産となります。 また親族名義の口座に移し替えていたお金は、名義はともかく実質的に亡くなった人の財産なので借名口座として相続財産を構成することになります。相続があると銀行口座が金融機関によって止められるので、このように便宜上親族名義の口座を借用することがありますが相続税申告上の財産として課税対象となりますので注意が必要です。
富裕層の方、中間層の方ともに見落としがちな相続対策
<法人設立> 病気などで余命が限られてきたときに、本人が所有する個人不動産の名義を、新たに法人を設立してその法人名義に切り替えてしまいたい、と検討されることがあります。 あまり時間的余裕がないことから金融機関と融資の相談も出来ずあくまで不動産名義だけを切り替えようとするケースです。所有する不動産を新設法人名義にしてしまえば本人の相続税が課税されないのではないか、と考えるわけです。 法人の設立そのものは直ぐに出来ますが資金の裏付けがなく不動産名義の切り替えをすると、その新設法人の帳簿上その本人から購入資金を借入れて、法人が不動産取得をしたことになります。 その場合、法人が本人から借入れたことになる金額が、ご本人から法人に対する『貸付金』として相続税が課税されます。不動産評価額での取り引きがあったことになるので、不動産評価額相当が『貸付金』として相続税の課税対象になります。 問題はそれだけに留まらず、個人不動産を新設された法人に名義変更することは税務上譲渡したことになるので、本人の所得税としての譲渡申告が必要になってきます。場合によっては多額の譲渡所得税が課税されます。 このように急に相続対策をしようとすると、逆にデメリットが大きくなることが多いです。相続対策は生前に様々なケースを検討して最善策を採用する必要があるので、時間をかけて丁寧な検討を行った上で慎重に実行しましょう。 執筆者:小串 嘉次信 / 税理士 税理士法人OGU(芦屋市)代表社員
ファイナンシャルフィールド編集部