残り21秒で制した首位攻防戦。二度の2点ビハインドから追いついた“小宮山流”戦術論「どこに優位性があるか。そのためになにをするか」|フットサル
11月4日、町田市立総合体育館にてFリーグ2024-2025 ディビジョン1の第13節が行われ、ペスカドーラ町田とバルドラール浦安が対戦。5-4で浦安が勝利した。 【映像】「これは止められない!」元ブラジル代表の脅威の弾丸シュートの瞬間 試合を終え、浦安の小宮山友祐監督とキャプテンの石田健太郎が記者会見に出席した。
あまり言いたくないですけど、フェイクです(笑)
●バルドラール浦安|小宮山友祐監督 ──今日の試合を振り返って。 非常にタフなゲームになることは、試合の前からわかっていました。そのゲームを、最後まで選手たちがやるべきことをやり続けて、勝ち点3を取れたことは非常に大きかったと思います。 第1ピリオドで0-2にされて、第2ピリオドで一度追い付きましたが、また2-4にされるという、本当に苦しい展開でした。それでも、誰一人心が折れることなく、勝利を目指す姿をプレーで表現できたと思います。 この勝利は、選手たちのおかげです。勝ち点3を取ることができてうれしく思いますし、まだなにもつかんでいないですが、自分たちが目指すところへ近づくことができたと思っています。 ──残り時間4分半、2-4のスコアでタイムアウトを取りましたが、パワープレーをする選択肢はあったのでしょうか。もしくは流れのなかで点が取れると考えていたのでしょうか。 考えていたこととしては、2つあります。2-4にされたことは予想外でしたが、残り6分を切った時のタイムアウトで「今日はパワープレーをしない」と選手たちには伝えました。スカウティングで町田のパワープレーのディフェンスが非常に良かったので、自分たちの攻撃の引き出しとそこを比較して、パワープレーはしない選択をしました。 その代わり、自分たちがどこに優位性があるかを考えて、レアンドロや吉田圭吾がサイドの1対1で勝負できると踏んでいました。実際に、レアンドロもこの試合で得点していますし、吉田の縦突破からの左足シュートやその後の同点弾は素晴らしかったと思います。 2つ目は、どちらかというと、この1週間はパワープレーの攻撃よりも、ディフェンスのトレーニングに時間を割きました。(石田)健太郎、田中(晃輝)、本石(猛裕)、菅谷(知寿)のパワープレーのディフェンスには自信があったので、どこかで引っ掛かるかな、と。 相手のパワープレーの攻撃は、前回ホームで対戦した時と、同じようなカタチだと予想していました。町田は最近ずっと勝っていたので、なかなかパワープレーをする機会がない。我々はパワープレーを受けることが多かった。お互いがパワープレーの攻撃を実践でやっていないなかで、どっちに分があるかを考えた時に、私はディフェンスのほうが分があると考えました。 ゲームの流れとしても、最後に(長坂)拓海と菅谷の冷静なプレーで勝利することができましたが、二度引き離されたところから追いついたことからも、勝ち点3を取りにいくより、勝ち点1を積み上げることが大事な試合だったと感じています。 以上の2点、「パワープレーをしないこと」「パワープレーのディフェンスに自信があったこと」から今日のような試合運びになりました。 ──今日の町田との対戦で意識していたことは? 町田さんの強みはカウンターですよね。速いですし、タフで、最後までやり切ってきます。(クレパウジ)ヴィニシウス選手が決めたゴールのように、決定力も高い。 そういうチームに対して、トランジション合戦はあまり分が良くありません。逆にボールを保持して、空いた背後に出ていくという駆け引きは常にありました。プレッシャーがかかるからこそ背後に出よう、と。 実際に健太郎もワンツーをして裏に出ていく場面がありましたが、やっているほうからしたらきついんですよ。でもそれをやり続けられる強さが今シーズンのチームにはあると思います。 ──第1ピリオドの早い時間に5ファウルになりましたが、6つ目を取られないために、チームに落とし込んだことは? これだけハードな試合になるとファウルも溜まってしまいます。どちらかというと、2、3年前、我々は5ファウルが溜まるようなチームではありませんでした。それだけディフェンスで強度を出せるようになってきたということでもあります。もちろんファウルはしてほしくないですが、プレスをかけてボールを奪う、前進させないという部分で、今シーズンは選手たちがすごくハードワークしてくれて良くなっていると思います。 そして5ファウルになってタイムアウトを取った時は、「イゴールを使って時間を消費していこう」と伝えました。6つ目のファウルをもらって、第1ピリオドで0-3になったら厳しいので、もう0-2でもいいと。至ってシンプルですけど、まずはGKを使ってマイボールの時間を長くし、相手コートでプレーして、最後はシュートで終わるところを徹底しました。 第1ピリオドが噛み合っていないことは、選手たちもコートのなかで感じていたと思います。健太郎がいうように、緊張なのかプレッシャーなのかはわからないですが、「うまくいっていない」ことは明らかだったので、パワープレーまではいかなくとも、自分たちのいろんな引き出しから、いまはイゴールを使ってポゼッションの時間を長くするリスクのない攻撃を選択しました。第1ピリオドは、時間を使って0-2で終わってかまわないと伝えました。 選手からすると難しいですよね。0-2で負けている状況で点を取りにいきたい。でもそこで我慢して、落ち着いてマイボールで時間を使っていこうと話しました。 ──二度、2点差に放されましたが、1点を返してから2点目も早かったと思います。そこで意識していたことと、追いついた後の指示は? 勝っていても、失点するとチームとして気持ちが下がりますよね。逆に負けているほうからしたら、チャンスだと思うので、もっとアグレッシブにいってほしいと伝えました。積極的に仕掛けられる選手は仕掛けてほしいし、ピヴォの選手は前に張っていてほしい。自分たちがもう1点取るために必要なことは、相手コートにどれだけ早く入れるかというのは常々言っていますし、今日もそれを体現してくれたので追いつくことができたと思います。 追いついた時は、そこは私もすごく迷いましたが、相手の出方も見たかったので、残り時間も考えて少し時間を使いたいと考えていました。2-4から4-4に追いつかれたので、おそらくパワープレーをしてくると思いましたが、そこが見たかったので、少し時間を消費して、ゲームを落ち着かせるように伝えました。 ──タイムアウトを取った際、長坂選手がGKユニフォームを着ていたのは? あまり言いたくないですけど、フェイクです(笑)。パワープレーのディフェンスの選手に出てほしかったので、拓海にユニフォームを着させて「申し訳ないけど、立っていて」と。私も逆の立場であれば絶対にそうすると思いますが、パワープレーのディフェンスが出てきたので、そこでどうするかは、吉田とレアンドロ、出ていた全員には伝えていました。 なので、まったくパワープレーをするつもりはありませんでしたが、自分たちがイニシアチブを取るには、相手のディフェンスを変えることが必要でした。当然ディフェンスの選手が出てくると攻撃に対するストロングが減るので、自分たちが優位に立つためになにをするかというところですね。 ただ、今日は結果としてたまたまうまくいっただけです。それは私の力ではなく、選手の力です。こっちがやれと言っても、それをやり切る選手たちが本当に素晴らしいと思いますし、伝えたことを見事に体現してくれて感謝しかありません。それをやってくれたからこそ勝てたと思っています。