中国・習近平氏が表明した「産業システムの改善」には「産業構造」が必要
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が3月7日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。中国・習近平国家主席が表明した「産業システムの改善」について解説した。
中国・習近平国家主席、全人代の分科会で「産業システムの改善」を表明
中国の習近平国家主席は3月5日、全国人民代表大会(全人代)の江蘇省の代表を集めた文科会のなかで「イノベーションを促進し、新興産業を育成し、産業システムを改善しなければならない」と表明した。 飯田)李強首相の演説では、政府の「5%前後の成長率目標」を変わらず主張していました。
産業システムを改善するためには産業構造を変えなければならない
宮家)国家主席が「イノベーションを促進し、新興産業を育成し、産業システムを改善する」と言ったとしても、それで経済が言った通りになるわけではないですよね。経済は、政治家ではなく、普通の人々が回しているのです。彼らが民間の知恵と努力を使い、初めてこのような経済成長が起きる。 飯田)国家主席が言えばそうなるものではない。 宮家)中国はいま経済的に、非常に厳しい状況に置かれています。バブルが弾けて不動産価格が低迷し、若者の失業率も高い。それに加えて、「中所得国の罠」に嵌まっているのです。中所得国の罠とは、1人当たりのGDPが1万ドルを「超える・超えない」辺りになると、世界の工場として低賃金で輸出していた方法がコストに見合わなくなるので、産業構造を変える必要があるという話です。そのとき行うべきなのは自由化であり、規制緩和、民営化、国有企業の改革、イノベーションなども進めなければならない。
「民間企業を活用する」と言っておきながらIT企業を規制 ~このままでは経済成長は2~3%か
宮家)それはわかっているので、習近平さんも「イノベーションをやれ」と言っているのです。でも、そのためには規制緩和を行い、もっと民間に自由に経済活動をやらせなければいけません。確かに「民間企業を積極的に活用する」と言ってはいますが、一方でインターネット企業などを規制しているではないですか。 飯田)アリババなど。 宮家)アクセルとブレーキを一緒に踏むようなものなので、どちらかが暴走するに決まっています。それで政府の経済成長率目標を5%前後に設定できるのでしょうか。5%どころか、IMFは4.6%と予測していますよね。このままだと、実態は2~3%だと思います。